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「悪霊狩猟団: カウンターズ(驚異的な噂)」 - 痛快なのに愛が満ちて泣けるSF

★★★★★+

ティザーに惹かれて観始めたドラマです。邦題のせいもあってか、お化け退治の痛快・爽快系ドラマをイメージして足を踏み入れ、実際そうした側面もあるにはあるのですが、軽くなりすぎないところがやはり韓国ドラマの地力の強さ。これまた人気のウェブ漫画が原作ということで、ウェブ漫画の勢いもすごいですね。

主人公ソ・ムン(チョ・ビョンギュ)は子供の頃に交通事故で両親を亡くし、自分は生き残ったものの片足が不自由に。7年が経って今は高校生になり、祖父母と暮らしています。ごく普通の少年として幼なじみたちとのんびり過ごしていたソ・ムンですが、ある日突然、何かが身体の中に飛び込んできて夢で不思議なおばあさんが話しかけてくるように。そして町で人気のククス屋を営むカ・モタク(ユ・ジュンサン)、ト・ハナ(キム・セジョン)、チュ・メオク(オム・ヘラン)、そして超大企業の会長であるチェ・ジャンムル(アン・ソクファン)と出会います。彼らは殺人衝動を持つ人間に取り憑いて人を殺していく悪霊を退治することを仕事に、常人の何倍もの身体能力や特殊技能を与えられた「カウンター」と呼ばれる人々で、ソ・ムンにもカウンターになれと言います。カウンターはあの世にパートナーを持ち、そのパートナーが自分の中に入ることでパワーを得るのですが、ソ・ムンのパートナーになるウィゲンは緊急事態で唐突にソ・ムンの身体に入ってしまっていたのです。命懸けの仕事になると聞いたソ・ムンは一度はそれを断りますが、幼い少年の命を救ったことでカウンターになる決意をします。そして悪霊を退治していくうち、過去の事件の意外な真相が見えてきて…。

といった具合に1話完結の勧善懲悪系ファンタジーみたっぷりに始まり、祖父母思いの朗らかな少年がある日突然命懸けで悪霊と闘えと言われるこの感じ。普通の少年少女が特別な力を得て世界のために脱皮していく姿というのはどんなに使い古された王道シチュエーションであろうと見ていて面白いものです。

何よりソ・ムンはとにかく心優しい。周囲への思いやりを土台に、そして恐らく誰よりも「自由自在に駆け回ること」に憧れてきたぶん、ソ・ムンは著しい成長を遂げていきます。一方でまだ高校生の彼は感情の抑制に未熟さも覗かせ、そんなキャラクターが持つ引力が強く、どんどん引き込まれていってしまいました。

豊富なアクションシーンなども見応えがありますが、ストーリーも複雑に編み込まれており、彼らが追いかけている最強の悪霊が次第にソ・ムンやカ・モタクの過去とも繋がっていく流れはなかなか秀逸に感じました。カウンターの面々のそれぞれの背景は様々な感情が渦巻いてグサグサ刺さります。ソ・ムンの両親についてはもちろん、ハナの家族のこと、ムタクの恋人、メオクと息子の物語など満遍なく細部まで丁寧に紡がれて、いろいろな愛情がグラスに水を注いでいくように満ちていき、最終回に至ってはもうずっと涙が止まりませんでした。

また第1話の冒頭ではソ・ムンの前任のカウンターがいきなり悪霊に殺されてしまい、このテの作品で主人公が命懸けの役目を果たすといってもそんなに真に迫る感じはないことが多い気がしますが、このドラマでは結構初っ端から誰がいつ死ぬか分からないという重石を載せられる気分になり実際に何度となくカウンターのみんなは死にそうに。いつの間にかすっかり家族のようになっているモタク、ハナ、メオク、チェ会長とソ・ムンを見ていると本当に無事に役目をまっとうして悪を倒してほしいと思ってしまい、ハラハラで心は休まりませんが、それこそが人間ドラマを引き締める絶妙なスパイスになっています。

基本的に全員いい役者さんなので登場人物みんなが本当に愛しいのですが、個人的にはキム・セジョン演じるハナがとても魅力的に思いました。闇を抱えていても意外とシンプルで愛嬌がないようで慈愛を感じさせる、不思議な魅力を放つ女性を実にナチュラルに表現していて、今後の出演作にも期待しています。

この16話はソ・ムンが両親に会いに行くための16話であり、一方で心の傷との付き合い方を考えさせるものでもありました。救いのない悪霊もいますが、どのキャラクターもそれぞれがそれぞれの傷を抱えていて、きっとその傷は消えることはなく、でも少しずつ癒していく中でじきに傷跡として落ち着いていく。そんな過程が優しく滲みます。

ヒューマンドラマとしてもアクション作品としてもクオリティが高いのですが、加えてSFとしてはどこかレトロお化けな空気すら感じさせる世界観で、大事な場面でも笑いを忘れずとっても愛せるドラマだと思いました。かなりだいぶオススメの一作です。


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喜怒哀楽ドラマ沼暮らし

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