「月水金火木土」 - 愛は満を持して始めるのではなく気づけば渦中にいるもの
★★★★+
パク・ミニョンが語学も料理もゴルフも武道もなんでもパーフェクトにこなす契約結婚のプロを演じるラブコメディのイメージでスタート。その役は確かにパク・ミニョン。パク・ミニョンでしかない。ですがトントントントン展開していく超高速ドラマなのかと思いきや、そもそも一概にコメディとは言いづらいミステリー要素（？）を匂わせてみたり、破天荒な設定ながらキャラクターはみんなちょっと抱えているものがありそうな感じで、導入から期待を裏切ってハイブリッドな世界観が広がります。
外見の美しさはもちろん、語学は堪能、様々な資格を有し、料理をさせてもゴルフをさせても完璧な万能っぷりを誇るスーパーウーマンのチェ・サンウン（パク・ミニョン）。彼女は妻を必要とする人々のためにひと肌脱ぐことを職業にしている「シングルライフヘルパー」。親の手前、結婚することにしたい男性や友人たちの前で妻を見せたい男性、子供の行事のために母親が必要な男性などのため、実際に籍を入れることすら厭わない契約結婚のプロです。
お金も貯まってきて、そろそろこの仕事から足を洗おうとしていたサンウンですが、5年に渡って月水金の週3日だけ食事をともにする契約を続けてきた謎の顧客チョン・ジホ（コ・ギョンポ）には辞めるとなかなか言い出せません。そうこうしているうちに、新たに彼女に契約結婚の依頼をしてくる人物が。ジホと同じマンションに住み、火木土曜日の契約を提案してきたのはなんと超人気俳優のカン・ヘジン（キム・ジェヨン）でした。財閥家の末息子でもある彼はどうやらサンウンのことを昔から知っているようで…。
契約結婚がつなぐ縁ではありますが、ジホとは長い付き合いの中でどことなく感情が生まれているようでもあり、ヘジンはヘジンでサンウンがずっと忘れられない初恋の様子。序盤から三角関係への発展を匂わせながら進んでいく物語ですが、ジホはどんな人物なのかもサンウンをどう思っているのかも本当に謎。朴訥、という言葉がぴったりな彼は徹底的に無表情でぽつりぽつりと喋ります。そんなジホの心のうちが少しずつ輪郭を見せてくる過程が中盤にかけての面白さ。対するサンウンは考えが分かりやすい率直なヒロインに見えます。契約結婚相手としての有能さもさることながら、基本的には自分を削っても他人に利することをよしとする優しい女性なので見ていて応援したくなります。ヘジンもスーパースターでありながら無邪気に初恋を追いかけう子犬のような青年でかわいらしいです。「あなたに似た人」で見せた泥沼の麻薬みたいな年下男とは打って変わって、片想いでも一生懸命直進する爽やかさを見せてくれます（でも全体には、月水金/火木土と言いつつ月水金がほぼ優勢なのでヘジンもっと頑張れ感）。
サンウンの生い立ちの問題や、彼女が繰り返してきた契約結婚の後腐れが障害として立ちはだかってきたりはするのですが、やがて本当の愛を見つけていくサンウンの、基本的には前向きな物語です。「気象庁の人々」でもそうでしたが、ずば抜けて有能でありながら恋には不器用で、そして海のように深い情を見せる女性像がパク・ミニョンによく似合っているのかもしれません。彼女主演ならもっと振り切ってコメディも見てみたいところではあるので無難な恋愛ドラマに落ち着いてしまっている感も否めない作品ではありますが、穏やかに染みていくような愛情を感じたいときに良さそうな一本。コ・ギョンポのジホも噛むほどに味がする系のハイスペックイケメンでオススメです。
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