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「ロースクール」 - 温度と手触りのある法を感じさせるドラマ

★★★★

2、3回ほど初回を見始めたものの若干設定が小難しい印象でどうも続かず脱落していたドラマだったのですが、なんとなく改めて観始めたら面白くなり、一気に観終わりました。主要キャラクターを演じているのがキム・ボムだと気付いて、「九尾狐伝」でのふてくされた弟狐役とのあまりの違いに見入ってしまったのもあるかもしれません。

舞台は韓国大学のロースクール。学生たちが模擬裁判を行っていると、教授のソ・ビョンジュ(アン・ネサン)が体調が悪そうな様子を見せ休憩になります。しかし休憩時間が終わっても戻ってこないソ教授。学生のチョン・イェスル(コ・ユンジョン)が教授の部屋を覗きに行くと、なんとそこにはソファで息絶えたソ・ビョンジュの姿が。

ソ教授との因縁がある元検事の刑法教授ヤン・ジョンフン(キム・ミョンミン)が重要参考人として連行されることになりますが、もちろん物語は一筋縄では行かず、ソ教授の甥であるハン・ジュニ(キム・ボム)に嫌疑がかかったり、過去のとある事件との関連が浮かび上がってくるなど、これでもかこれでもかと言わんばかりに複雑化していくのです。

他にも、落ちこぼれですがポテンシャルを感じさせるカン・ソルA(リュ・ヘヨン)や優秀だけど母親の束縛に悩むカン・ソルB(イ・スギョン)など、個性の強いキャラクターの集うスタディメンバーを中心に進んでいく物語。ロースクールが舞台というだけあって法解釈や判例を鍵に展開していくロジカルさは独特で、普通の弁護士モノや検事・警察モノに比べても法や法制度をストーリーの土台とする姿勢が強い印象がありました。

そして面白いのは、各キャラクターがそれぞれに抱えている過去や問題が実に自然と撚り合わさっていき、いつしかソ教授の死に繋がっていくところ。ある意味で動機のある人が多いのですが、逮捕されたり検事と通じているなど、表面的にも怪しい人物は次々と替わっていって、全てが出尽くしたところでようやく結論が見えてくる感じです。

なので必然的に途中途中で消化されるエピソードもたくさんあり、中でも私はチョン・イェスルの裁判のシーンがとても印象的で好きでした。卑劣とも言える恋人のDV男の仕打ちに法で立ち向かうイェスルと、ヤン教授の、彼にしかできない手法での励ましと後押し。このドラマが「ロースクール」である意味を存分に活かすような法廷です。

「法とは何か」みたいなことを何度も問いかけ、画面的な派手さや華やかさはそれほどないものの、訴えかける感情が色彩豊かな作品。リアルな事件がメインなので学園ものとして学生たちが成長していくのとは少し違うのですが、実際の殺人事件とそれにまつわる様々な裁判を通じて目に見えて強くなっていくロースクール生メンバーの姿が清々しく分厚く楽しめる一本です。


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喜怒哀楽ドラマ沼暮らし

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