「還魂:光と影」 - サッドエンドの向こうに超王道の大団円
★★★★★
ハッピーエンドかと思いきや衝撃の大反転エンディングを見せたシーズン1から、数ヶ月のインターバルを経て公開されたシーズン2。舞台は1から3年後の世界、そしてヒロイン役は俳優交代とのことでどんな物語になっているのか期待・不安入り混じりながら観ました。1の終わり方が前段にあるので世界観は全体に昏さを帯びつつも、相変わらず極上のファンタジーであり、出演者たちの役柄への浸透度はより深度を増して見え、一段と切ないロマンスを楽しむことができました。なんというか、悪役がとことん悪役なので最終的にとても痛快。
ナクス(ムドク / チョン・ソミン)が暴走した悲劇から3年。氷の石の気を得たことで換水(ファンス)の領域に達し生還を果たしたウク(イ・ジェウク)は、ナクスと婚約していたこと、氷の石の圧倒的な力を得たことで周囲から腫れ物のように扱われ、王室と松林、天附官はその力を還魂人の討伐に捧げさせることでウクとの共存をはかっていました。
ある日、還魂人を追っていたウクは鎮妖院の中に入ります。するとその奥に軟禁されている神女が。彼女は死んだとされていたチン家の長女、ブヨン(コ・ユンジョン)だと言うのです。
母であるチン・ホギョン(パク・ウネ)により軟禁状態のまま結婚して後継者を産むように言われたブヨンは部屋から逃げ出します。そして町中でウクと再会することに。ウクが最強の術者だと聞いたブヨンは、ウクに自分との婚姻を持ちかけます。初めは聞き流していたウクですが、ブヨンの神力を知り、彼女なら自分の中の氷の石を取り出してくれるのではと考えるのです。ですが、氷の石を取り出すことはすなわちウクの死を意味しており…。
まず際立つのがシーズン1と比べてぐっと大人になっているキャラクターたち。最愛のひとに殺されかけ喪ってしまったウクはもちろんのこと、身を引いてしまったことで悲劇を防げなかったと自分を責めるユル(ファン・ミニョン)、結婚も台無しになってしまったダング(ユ・インス)、松林も人がいなくなり総帥は隠居…とそれぞれに辛い記憶を背負って無邪気ではいられないのです。重いといえばそうなのですが、演技に一層の深みが感じられるというか、レザーが経年変化で味わいを増すように役者たちの中に役柄がより馴染んできているようにも思えました。
そして死んだと見せかけて生き延びてる風だったナクスがいつ現れるのかと思いきや、ちょっと予想外の展開に(生きてはいる)。果たしてウクとユルは彼女に気づけるのか、みたいなのが序盤です。チョン・ソミンが大好きなので俳優の交代は残念ではあるのですが、コ・ユンジョンはコ・ユンジョンで落ち着きと華が共存する愛らしさを見せてくれます。ふたりの役柄は地続きになるのですが、コ・ユンジョンのブヨンは不思議なほどチョン・ソミンのムドクの面影を漂わせており、物語に説得力を生み出していました。
1では圧倒的にユルがイケメンポジションを張っていたのですが、2になると急にウクがかっこいいのも驚きでした。他を寄せつけない圧倒的な強さの持ち主になったことで立ち姿ひとつ取っても溢れ出すようなオーラ。哀しみを抱えて浮つきはなくなり、顔立ちもグッと精悍になって見えます。中盤からブヨンとのロマンスも転がり始めるのですが、1では高校生の初恋みたいな恋愛模様だったウクがすっかり大人の色気を醸していて、リアルな人物の成長を見ている気分になりました。
終盤はファンタジーの王道のような展開になっていくのですが、命がけの戦いもあり、切ないシーンはてんこもり。あととにもかくにも最悪の敵チン・ム(チョ・ジェユン)がしぶとい!しぶとい上に感情移入の余地がない!ここまで徹底して悪役というのも近年あまりないかもしれません。観ていてそのしぶとさにこちらが疲れてくるほどでした。
最終的には最後まで観た視聴者が十分に報われる終わり方だと思います。欲をいえば恋愛方面で初恋を引きずり倒しているユルにもう一息がんばってほしかった気はしましたが、その分ウクが堂々たる主役として君臨していました。ウクとブヨンがこのふたりならではの生き方を手にし大団円を迎えられたので文句なし。これで終わってしまうには少しもったいないほど仕上げられた世界観でしたが、たっぷり楽しめました。完走した!と思える作品です。
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