てんとう虫は冬を越す
ある日、朝の満員電車のドアにてんとう虫が止まっていた。新卒の5月ごろだったと記憶している。会社に行くのが嫌で嫌で仕方なかった頃だ。誰も知り合いのいない土地で、初めての一人暮らし。それはそれは毎日が憂鬱だった。「こんなとこにいてかわいそう」、少し自分と重ねる部分があった。手に乗せて外に逃がしてやろうと思った。手に乗せた後でてんとう虫はくさい液を出すことを思い出した。案の定、黄色い液が手についていて少しだけ後悔した。手を広げると太陽の方へ飛んで行った。てんとう虫は太陽の方へ飛ぶ