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小説の神様 わたしたちの物語 アンソロジー(七作品は短編小説、一作品は漫画)
2月に、どんどんと潰れていく本屋さんに危機感を抱き、近所の本屋さんの本を買って応援しよう! と思い立ったとき、店頭で出会った文庫本が相沢沙呼(あいざわさこ)さんの「小説の神様」でした。
その後、当初は5月に映画が公開予定だったEXILE/FANTASTICSの佐藤大樹くん、橋本環奈ちゃんのW主演による実写映画版「小説の神様」が延びに延びてようやく今年の秋、10月2日に上映となり、封切初日に観に行きました。
そうして、12月に入って、ふたたび本屋さんを応援しようと思ってふらりとお店に入ったら、なんと続編である「小説の神様 あなたを読む物語」の上下巻と、作品「小説の神様」の世界観やキャラクター(登場キャラ、オリジナルキャラどちらもいます)を、小説界の第一線で活躍するさまざまな作家さんたちが描く「小説の神様 わたしたちの物語 アンソロジー」が並んでいました。
中でもこの「小説の神様 わたしたちの物語 アンソロジー」の感想と言うか、小説レビューを書かせていただく気になったのは、このアンソロジーが本家「小説の神様」に負けず劣らず、クリエイターにとって心に刺さる物語であり、そしてそれぞれの熱のこもった小説愛が語られていたからです。
正直なところ、私はアンソロジーを書かれた作家さんがたを、ほとんど知りませんでした。誰もが、どこかの賞でデビューしたり、または書く仕事をずっとこなしてきたりして、厳しい出版の世界で生き抜いてきた方々なのに。
このアンソロジーでは、主題である小説家たち、そしてその本というか、原稿の読者や、本屋の店員や、編集者など、小説家からストーリーが生まれて、出版されて店頭に並ぶまでに関わるひとびとのさまざまな人間関係や苦悩や葛藤が描かれていて。
昔に「お客さまは神さまです」なんていう言葉が流行ったこともありましたが、書籍を持つ小説家にしてみれば、そうして自分に関わって本が流通するまでに関わってくれるあらゆるひとびとが自分にとっての「神さま」なのかもしれないな、と感じました。
以下は「小説の神様 わたしたちの物語 アンソロジー」に収録された作者さんと作品名です。
降田天(ふるたてん)さん 「イカロス」
櫻(さくら)いいよさん「掌のいとしい他人たち」
芹沢政信(せりざわまさのぶ)さん「モモちゃん」
手名町紗帆(てなまちさほ)さん「神様への扉」
野村美月(のむらみづき)さん「僕と”文学少女”な訪問者と三つの伏線」
斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)さん「神の両目は地べたで溶けてる」
そして本家、相沢沙呼さん「神様の探索」
おしまいに紅玉(こうぎょく)いづきさん「『小説の神様の作り方ーーあるいは、小説家Aと小説家Bについて」
どの作品も良かったのですが、私個人の特にお気に入りは、小説は、かつて児童文学として触れた作品への愛すべきパロディがふんだんに感じられる芹沢政信さんの「モモちゃん」と、あのラノベの人気作"文学少女"シリーズと夢のコラボ! な野村美月さんの「僕と”文学少女”な訪問者と三つの伏線」です。
そして、このアンソロジーのなかで唯一の漫画だった「神様への扉」
サブキャラクターであるくのりんと秋乃ちゃんの出会いが描かれていて、柔らかなタッチの絵の雰囲気も良き良き。漫画家の手名町紗帆さんはこの「小説の神様」の漫画版を電子雑誌「少年マガジンR」で掲載していて、バックナンバーに収録されています。
この「小説の神様」と「小説の神様 あなたを読む物語」の上下巻、そして「小説の神様 わたしたちの物語 アンソロジー」というシリーズ四作は見慣れない「講談社タイガ」という名前が付いているなぁということが気になって調べてみたら、2015年から始まった、わりと最近に出来たレーベルだったんですね。
そのへん、小説を今までは作品だけを楽しんでいたのが、本の流通や出版社の事情なんかもすこしだけ知識が増えて楽しくなるのがこのシリーズです。
本好き、神さま好き、クリエイターとして、世に作品を出す立場である、そんな方々にはぜひ手に取ってもらいたいシリーズ。
小説を取り巻くひとびとの、豊かな世界に触れられますよ。
※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーからia19200102さんの作品をお借りしました。ありがとうございます。