インタビュー調査の実態~インタビューフローの観点から
前回は、インタビューフローには「アスキングタイプ」と「アクティブリスニングタイプ」があることをご紹介しました。今回は、世の実態がどうなっているのかということについてもご紹介しておきたいと思います。
これは調査会社社員を対象にインタビュー調査についてのアンケート調査を行うという奇抜な調査の調査結果です。(一文の中にいくつ”調査”がでてきたでしょうか?w)
この設問はR(アスキングタイプ)とS(アクティブリスニングタイプ)のインタビューフローを提示して、実際に目にするものはどちらの印象に近いのかということを設問したものです。結果はご覧の通り、Rが約6割なのに対してSが約3割で、圧倒的にアスキングタイプのインタビューフローを目にすることが多いという結果になりました。
さて一方、これは「定性調査」の公式な定義です。
定性調査にはいろいろな定義がありますが、共通しているのはこの「非構成的」であるという点です。この定義を踏まえ、インタビューフローについて別の角度から設問した結果が以下のデータです。
このデータによると、グループインタビューについて「あるべき」という理想像ですら約7割の人が「事前に設問が構成されているもの」という認識を持っており、さらに、現場では実際にはもはや9割以上が「構成」派であるという恐るべき結果になっています。
この「構成」という言葉には多義的な意味合いもありますので、別に、「よく目にするインタビューフローが当てはまる特徴」という設問をしていますが、上記の結果をさらに裏付ける結果となっています。このグラフ上で赤の矢印は、それぞれアスキングタイプとアクティブリスニングタイプで対になる反対の特徴を結んだものですが、アスキングタイプの特徴が圧倒的に優勢であるわけです。
さて、それでも上手く行ってればよいではないかということになるわけですが、実際に現場で起きていることを表しているのがこのデータです。
このデータを見てわかるのは、認識として、すなわちある「べき」インタビューとしては、約7割がQ(完全連結型)型だとしているわけです。これはいろいろな定性調査の教科書にも書かれていることなので当然です。しかし、実際に目にしているものはそれと反して過半数がP(ホイール型)になっているということなのです。つまり、「言ってることとやってること」が違ってるということなのです。この実態は当然ですがクライアント側においても同様です。つまりクライアントにとっても「謳い文句と実際」が違っているということになります。この結果、クライアントサイドには大きな不満や不信があると思われるわけです(自分の体験を考えると明らかにあります)。
この調査では実は、他にも司会法などについても注目するべき結果を得ているのですが、それは先にご紹介することとして、今回ご紹介したことをまとめると、
1、グループインタビュー調査は完全連結型である「べき」だと考えられている。
2、しかし大半の場合においてインタビューフローの作り方が間違っており、「アスキング型」になってしまっている。
3、アスキング型のフローなので、個別対象者に対する質疑応答・一問一答の「ホイール型」に追いこまれていくのが必然である。
4、その結果、現場では大半のインタビューが「アスキング型」、「ホイール型」になってしまっている。
5、その結果、例えば「グループダイナミクスが発生する」、「自由な会話が盛り上がる」といった現象は偶然にしか発生せず(発生しない方が「必然」なので)、クライアントの期待感を裏切り、満足度を下げるとともに成果としても見るべきものがなくなっている。
という結果になっているだろうということです。
こうなってしまう理由はいくつか考えられますが、定性調査についての専門的教育を受けていない人=アンケート調査をしていたような人、がいきなり定性調査を実施するといった要因が考えられます。そしてそのまま年月が経ってもそのままのインタビューフロー作成が行われているのではないかと考えられます。要はプロではないわけです。
もし、インタビュー調査についての不満や疑問をお持ちなのでしたら、まずは、インタビューフローを確認してみられることでしょう。