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インタビュー調査の常識・都市伝説のウソを暴く~「長時間(話を独占する人)発言の発生」~「謝礼目当て」という調査協力者に関するウソ

今回は、前回の「グループダイナミクスが発生しない」問題と共通の原因を持つこの問題について論じたいと思います。

これまた根強く持たれている都市伝説の一つに「インタビュー調査に来る人は謝礼目当てである。」というものがあります。また「リクルートにあたってどういう人を呼べばよいのか?」というのもその裏返しとして根強い疑問として持たれています。例えばリクルートアンケートに「ライフスタイル調査」的な設問をして「イノベーター的」な回答をした人を選べばよいのではないか?といった議論があります。これらは「沈黙」の問題とも関連しています。「謝礼目当てだから話す気や話すことがなくてもインタビュー調査に応諾する、故に沈黙する」、という見方です。

「どんな人を呼べばよいのか」についてはALIの体系においては、「意識マトリクス理論」と「NEC理論」が解決していますが、そもそも「イノベーター的な人」がなぜ望ましいと考えられるのかというと、普及理論からそれが「フォロワー的な人」よりも「情報発信意欲」の高い人であってよくしゃべるだろうという期待があるからです。

しかし、リクルートアンケートにそのような「ライフスタイル調査」的な設問をして対象者条件とするのは私はナンセンスだと考えています。なぜならば、リクルートアンケートの回答者の中で「話す意欲」の低い人は、その他の条件を満たしていてもそもそもインタビュー調査には応諾しないからです。むしろアンケートにすら興味を持たない人が多いと考えられます。すなわち、少なからず手間のかかるアンケートに答えた上で調査協力に応諾するのはそもそも「話す意欲」が高いということに他ならないということです※。

※検証されているわけではありませんが、この意味で、良いリクルートの為には調査謝礼は高すぎない方が良いという議論があります。そこそこの謝礼でもわざわざ出席してくれる人は話したいから協力してくれるということです。

かつての「リクルーターさん」と呼ばれる地縁ネットワーカーによる機縁リクルートの場合には、リクルートが困難な場合「員数合わせ」で無理やりに条件外の人を条件合致として混在させたという悪質なことも例外的ではありますが実際にあり、意欲の低い人も混在したことがあったと思われます。しかしWebリクルートが主流の今の時代、そもそも自発的にリクルートアンケートに答え応諾して調査会場にまで来ている人が話さないわけがないのです。私は常々そう認識していますし、経験上も実際にそうです。

つまり、調査会場にまでやってくる人は、謝礼も動機の一つではありますが、そもそもが「話す気満々」でやってきているということです。むしろそちらが主目的と言ってもよいくらいです。理由はともあれ話したいから話しに来ているのです。態度と行動、すなわちホンネにそれが現れているわけです。故に「ライフスタイル調査」的な設問は無意味だというわけです。それがなぜ話さなくなるのかは「沈黙」のところで論じた通りです。

「話の独占」問題はこの「話す意欲」に「集団形成」と「対象者の分断」の問題が相乗して発生すると考えられます。

それは、「インタビュー=アスキング」という基本認識である「話す気満々」の対象者に「出席者全員の自由な話し合いの場」であるという認識を持たせず、「指名」という形で他の対象者の発言時間とは分断された「個人が独占できる時間」を与えると全く悪気のない善意から自分が話せるだけのことを話そうとするのは当然だということです。特に周りの人が、その場でのふるまい方が分からないことによる遠慮や不安から発言量が少ないと、なおさらに自分がカバーしようと発言のモチベーションが高まる場合があるのだと考えられます。善意であればあるほどそうなる傾向が強くなるでしょう。そうすると「独占」の度合いが高まるわけですが、それに対してインタビュアーが適切にコントロールできるスキルを持たない「エキストラ」であればなおさらにそれが止められず難儀することになるわけです※。

このような対象者に対しての対応法は以前に説明済みです(2、一人で長話をする人が現れた場合)。しかし、そもそも「指名による分断」と「話し合いのルール」が共有・理解されていないことがその根底の原因です。

こういう人は調査する側からは傍若無人な人と見られたり、空気が読めない人と見られたりして悪意にとられがちなのですが、全くの善意だと言って過言ではありません。すなわち、以前に述べましたようにその人の発言意欲を上手くコントロールしながら利用することを考えるべきなのです。むしろこういう人がいることはありがたいことですし、他の人の発言を引き出すという役回りを演じてもらえるようにコントロールすれば良いのです。


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