「日本らしさ」とどう向き合う? 中国の日系介護企業の事情から考える
とても興味深い記事を読みました。
高齢化の著しい中国には、介護市場が伸びると考えた日本企業がたくさん進出しているものの、その多くは中国市場の難しさの前に撤退を余儀なくされており、現地に適応できた少数の企業だけが生き残っています。
しかし面白いのは、むしろ現地の人々からは撤退した企業への評価が高く、生き残った企業に対しては厳しい見方をしているらしいということです。
たとえば、日本で看護師の資格を取って介護の指導をしている中国人女性の、中国で成功している日系介護企業への評価はこんな感じです。
またさらに興味深いのは、そうして日本企業が「現地化」するいっぽうで、むしろ中国の企業のほうが「日本式介護」の良さを取り入れようと奮闘する動きがあるらしいということです。
まさに逆転現象です。そのうち、中国の介護事業者の方がよっぽど「日本式介護」を実践している、なんてことになったりするのでしょうか。
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この記事を読んで、2つのことを考えました。
まず1つは、日本式のものを世界に輸出することの大変さです。
日本的な高品質のモノであったりサービスというのは世界でも評価が高いですが、それらの「よさみ」(正しくない日本語)は日本的な特殊性に支えられています。
そしてそれを海外に輸出しようとすると、現地で受け入れられるために必要なことと、その日本的特殊性がバッティングを起こしてしまうのでしょう。現地に適応しようとするほど、日本的な「よさみ」は失われていくことになる。難しいものです。
必ずしも上記のような、中国人女性に厳しい評価を受ける日本企業がダメということでもないのだと思います。中国でサービスを維持し、利益を最大化するためには、切り捨てなければいけない部分というのもあるでしょう。その中で「日本らしさ」を大きく残しながらバランスを取るというのは、簡単ではないように思います。
あと、タイミングも重要なんだろうなと思います。相手方(国)が求める「日本らしさ」の濃度は、たぶん時期によって変わっていくものです。
日本的なものを受け入れる下地がどれほどあるか、さらにはそれに応える「日本らしさ」を実現するための人材が確保できるかなどは、時期によって大きく異なるでしょう。そのあたりも進出の成否を分けそうです。
このことがよくわかるのが飲食店です。中国でもこれまではほとんど日本の飲食チェーンは成功せず、その一方でマンゴーにマヨネーズをかけた寿司を出すようなローカルの「日本料理屋」が繁盛している、というのが常でした。
しかし直近では、「日本そのもの」のようなスタイルを保ったまま中国進出しているスシローが健闘しており、店舗数を増やしています。
感覚では、たぶんスシローも5年前だったらうまくいってなかったんじゃないかな? と思います。生食へのニーズや、日本式営業を可能にする人材の集めやすさなんかがちょうど揃ったのが、今のタイミングなのかもしれません。
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もう一つ思ったのは、企業にとっては「日本らしさ」の輸出は難しくても、そこにニーズがある限りは個人にとっては意外とチャンスなんじゃないかな? ということです。
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