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中国は学歴一辺倒から抜け出せるのか
こんなツイートを見ました。
最近は子どもとコスプレイヤーが一緒に写真を撮る姿を見ることが増えた。中国では早ければ4歳から大学生まで、ほとんどの人を計る物差しが学力しかない。そのため二次元に自分の自由を求める子どもが多く、今の社会制度が続く限り二次元の虜になる子は増え続けると聞いた pic.twitter.com/P2vI46LbX9
— 上海在住のえいちゃん (@Eichan_GZ) September 8, 2024
ACG(アニメ・コミック・ゲーム)に代表される「二次元」カルチャーの中国での相変わらずの強さとか、街中でコスプレしていても何も言われないおおらかさとか(地下鉄にJK制服と漢服と初音ミクが同乗したりしてます)、いろいろと語るべき部分はあるのですが、僕にとって思うところがあるのはこの部分です。
中国では早ければ4歳から大学生まで、ほとんどの人を計る物差しが学力しかない
これ、本当にそうなんですよねー。
子どもができて、必然的に子ども向けのサービスや商品をいろいろ見るようになったのですが、どっちを向いても「早教」(早期教育)と名前のついたものばっかりです。生まれた瞬間から「子どもに良い教育を」と親に迫る社会的な圧が、ものすごいことになっているのを感じます。
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そのほか、我が家ではまだ経験していませんが、こちらの人と話していると学生時代の苛烈なエピソードに事欠きません。
毎日夜の1時まで宿題に追われていたとか、勉強をサボっていたら包丁を持った親に追い回されたとか、成績が悪かったことで先生に「もうあなたの勉強を見たくない」とまで言われたとか……この国の学生たちは、えげつない教育競争とともにあることを余儀なくされます。
結局それは、どこまでも「文」≒知性的なものを偏重する価値観と、それに支えられた「高考」と呼ばれるたった一度の大学受験によって人生の大半が決まってしまうという強い社会通念によって起きている事です。
お勉強的な知性によって抜きん出ることができなければ人生詰んだも同然、という恐怖にも似た焦りが、この国の親子をほとんど勝ち目のない厳しい競争に駆り立て、その中にいる人々を画一的な物差しの中に閉じ込めています。
長らく続いてきたこのような価値観が、今後変わることはあるのでしょうか。
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国としての姿勢は、明らかに現状をよしとはしていません。
過剰な学歴競争は人々が子どもを持つことのハードルを上げてしまい、猛烈な少子化が進んでいます。また大卒に代表される若者に職がないと悲痛な声が上がる一方、サービス業や製造業では人手不足が叫ばれるなどのアンバランスも深刻です。これをなんとかしなければならないというのは、政治的にも喫緊の課題です。
これを是正するべく、政府側は過剰な宿題の禁止や学習塾の非営利化(実質的な廃止)を含む教育改革を実施したり、職業教育の普及を推進するなどの施策をとってきましたが、それらの成果はいまのところ出ていません。塾がなくなった代わりに個人の家庭教師が増えたり、絵画教室の皮を被った英語塾ができるなどしています。
これはおそらく、人々のほうの価値観が追いついていないことが原因です。「そうはいっても学歴が大事なことには変わりがないだろう」という疑いを、誰もが止めることができません。そして結局は、同じ競争に立ち向かう以外の道を見えなくさせています。
卷に巻き込まれたくない中国人、往々にして卷に巻き込まれる以外の生き方や思考法を持ち合わせていない。润中国人の多くも「上手に賢く卷に勝つ」みたいな発想に見える https://t.co/cJU5uilFap
— 華村@中国 「中国を言葉にするマガジン」更新中 (@stwtcpld) August 31, 2024
こうした競争を嫌うような向きもあり、そうした人は海外に出てきたりしていますが、結局その根本的な発想は「学歴競争に勝つ」というものを脱却できていないようにも見えます。単にその競争を賢く(ズルく)立ち回ろうということでしかありません。
国レベルで蓄積されてきた価値観は、やはり一朝一夕では変わらないし、その中にいる個人を強く縛っているということなのでしょう。その意味でやはり、中国が学歴一辺倒の価値観から抜け出るには、やはりまだ時間がかかりそうです。
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しかし、これはある意味では中国に暮らす人にとってはチャンスでもあるのではないかと思います。
こうした強い社会通念を振り切り、学歴や学力といった物差しから自由になることができれば、結構楽しい人生が送れそうな気がするのです。
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