面白いものを書くには「切り口」と「取材」が必要であると、2冊の良書から学んだ話
立て続けに2冊、面白い本を読みました。
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まずは、アジアITジャーナリスト・山谷剛史さんの「移民時代の異国飯」。
日本各地にある外国料理屋、といっても日本人向けにローカライズされたオシャレなエスニック料理の店などではなく、日本に定住している外国人が同じく日本に住む同胞に向けてやっている「ガチ」なお店を紹介する本です。
その「ガチ」っぷりたるや、店に入っても日本語のメニューがなく(もしくは「ツ」と「シ」、「ホ」と「术」が入り混じった怪しい日本語しかなく)、内装も飛び交う言語も異国そのもの。出てくるものは確かにうまいが、店に入ってから出ていくまでずっと料理の名前がわからない、というような「擬似外国体験」ができるお店ばかりです。
「西淀川のリアルパキスタン料理屋」とか「愛知のムスリム飯」は、キラキラ商社マンのデートには使いにくそうですが、逆に「そっち」が好きな人にはたまらなく刺さるんじゃないでしょうか。僕は少なくとも、「次に日本に帰ったら、異国飯を食べに行きたい!」という矛盾した思いを抱えるようになってしまいました。
またこの本は、単にそういったガチ異国料理店を単に紹介するだけではなく、その地域に異国料理店ができるほど外国人コミュニティや移民タウンが出来上がった過程や、そこにいる人々の暮らしぶりなどを同時にレポートしています。
日本の実質的な移民社会化が進んでいくいま、「日本のなかの外国」の実情を知ることができる良書でした。グルメ以外にも、多文化共生やそもそも外国に興味がある人は読んでおいて損はないと思います。
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もう一冊は、西村晋さんの「中国共産党 世界最強の組織 1億党員の入党・教育から活動まで」です。
組織としての中国共産党を徹底解剖する組織……とだけいうと、なんだかありふれた中国解説本のように聞こえてしまいますが、この本はいままでの共産党を語る本とは一線を画すものです。
というのも、この本は「中国共産党」と聞いて一般的に思い出されるような国家主席や幹部などの話題や、専制とも言われるような政治機構、苛烈な権力闘争……など、政治に絡む話はほぼなく、かわりに9,500万人の在籍者を誇る超巨大組織である共産党がどのように運営されているのか、その実態をひたすらストイックに述べていくものだからです。
共産党に入るにはどのようなプロセスを踏む必要があるのか……から始まり、草の根コミュニティとしての末端党組織がどのように運営されているのか、企業や大学に設置されている党組織は何をしているのか……など、「実働部隊」「国の運営組織」としての中国共産党の姿を、一つ一つ丁寧に紹介しています。
そこからは実に合理的で強固な運営体制や、ある意味では日本や諸外国よりもなどよりよっぽど「民主的」といえるかもしれない意思決定プロセスが見えてきます。もちろん、いつでもそれが効果的に機能するとは限らないのですが、少なくとも制度上は非常に優れたものを持っていることがわかります。
特に意思決定に関しては、中国がどうとかいう話をしなくとも、「組織としてどのように現場の声を吸い上げ、下位上達を実現するか」という面において、全ての組織にとって参考になるものがあります。
何より自分が中国に暮らしてきて、「なんとなく」のレベルでしか把握していなかったり、勝手にわかった気になっていた中国共産党という組織に関する解像度を、一気に高めることができました。今後、共産党に関する何かを見聞きした時に、何度も参照し直す本になると思います。
中国の人々にとって中国共産党は、国を治める巨大な権力機関であると同時に、小さい頃からごく自然にそこにある身近なコミュニティでもあります。そんな中国人にとっての空気のような存在を知るという意味で、これこそが「中国に関する誤解をとく」ための本だといえるでしょう。
中国に少しでも関わるすべての人に、読んでほしい本だと思いました。
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熱量高く本の紹介をさせていただきましたが、ここからはこの2冊を読んで感じた、僕自身が今後noteを書いていくなかでの課題について書いていきます。
それは、タイトルにもあるように「面白いものを書くには「切り口」と「取材」が必要」ということです。
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