【3】集中力の研究:現状分析
約4000文字
前回↓
今の状況を分析してみる
前回はほんとに簡単に今の作業のやり方を概観した。
同時に今困ってることとかについても書いてある。
しかしそこで書いていることはざっくばらんに今わかっていることを書いただけで取り止めのないものになっている。
この状態ではではどこから考えていけば良いのかということが発散してしまっていて掴みきれない。
手をつけるにしてもどこから手を受ければいいのかわからない。
というわけで今回は今の状況を分析・整理してみる。
分析・整理によって現在の問題点の見通しをよくした上でどこから考えていくのかを決めるのが今回の目標だ。
フレームワークを使ってみる
今の状況を分析するといってもどうすればいいのだろうか。
フリーハンドでやってしまえば前回とあまり変わらないものになってしまうだろう。
ずっと本棚に置いたまま温めておいた本に、読書猿『問題解決大全』がある。
出版する本の厚さに歯止めが効かなくなっている氏の本であるが、内容の濃さは折り紙付きだ。
しかし、私はこれまでこの本を一体どのように使えばいいのかピンときていなかった。
なんか使えそうという曖昧な理由で『アイデア大全』『独学大全』と共に本棚に並べていたが、やっとこの本の使い方を発見した。
この本はまさに「当事者研究の手引き書」だったのである。
特に『問題解決大全』の「サーキュラーな問題解決」という枠組みはまさに研究のことだろう。
この本では、問題解決の方法が「リニアな問題解決」と「サーキュラーな問題解決」の二つに分類されている。
「リニアな問題解決」は、原因と結果が直線的につながっている問題を扱う。
リニアな問題解決では、問題解決者は問題の外から問題を客観的にみることができる。
破裂した水道管は、破裂した部分を修復すればいいのである。
「サーキュラーな問題解決」は、より混沌とした問題を扱う。
鶏と卵の関係のように因果関係がループしていたり、問題それ自体が見えないという時には、サーキュラー(探索的)に問題を見ていく必要があるだろう。
「サーキュラーな問題解決」には、問題自体を分析するというステップが必要になる。
そもそも、何が問題なのか、という問題をまず解かなくてはいけないからだ。
水道管の中では、水の流れがおかしくてもおかしいのかを見つけること自体が難しい。こちらでは、流されながら、水道管が破裂していることを見つけ、対処しないといけない。
普段の生活のなかで突き当たる「問題」自体を分析すること、あるいは、「研究」することとはまさに、当事者研究の営みのことである。
というわけで、「問題解決大全」からフレームワークを引いて分析を行ってみる。
今回使用するのは「現状分析ツリー」である。
方法
現状分析ツリー
この方法の詳しい理論や歴史については、『問題解決大全』を参照してもらえばいいが、この現状分析ツリーでやりたいことは、「掴みきれていない問題の中核的な問題を発見すること」といえる。
「用途と用例」として「複数の問題の関係を把握する」「問題を生み出している悪循環を浮かび上がらせる」が挙げられている。
場当たり的に出てきた問題に対処していくのではなく、問題の核を見つけ、そこを突くことによって全体のシステムを改善するということ。
イメージが湧きづらいかもしれないが、実際やってみればわかると思う。
やり方としては5ステップ
分析する目的と範囲を決める
原因−問題面−結果をリストアップする
エンティティ同士を因果関係で結びつけていく
論理関係をチェックし、必要なエンティティを追加する
現状分析ツリーを完成させ、悪循環ループ、中核問題、根本原因を発見する
アプリ:iThoughtsX
アプリを使わなくてもできるが、前に買って全く使い方を見つけられずに放置されていた「iThoughtsX」を使ってみる。
このアプリはマインドマップを作るアプリだが、現状分析ツリーも作れる。
デジタルでやるいいところは、書き込んだ位置関係を簡単に編集できること。
現状分析ツリーは一つ一つの要素を位置関係を変えながら関係を考えていくので、デジタルがやりやすいと思う。
分析
導入がかなり長くなってしまったが、ここから実際に分析に入る。
1.分析する目的と範囲を決める
分析の目的は、「集中できない状況」に見通しをつけることであり、分析の範囲は「家での作業環境」としてみる。
2.原因−問題面−結果をリストアップする
現状の問題としては、
・座ってられない・注意散漫
・作業を把握できていない
・睡眠リズム
・机の不整理
・手が寂しくて手が落ち着かない
の5つ。
3.エンティティ同士を因果関係で結びつけていく
そこから問題面−結果を考えて、図にすると以下のようになる。
一番左が原因、中央が問題面、結果が右というふうになっている。
「座ってられない・注意散漫」であることによって「目の前のことが進められない」ことや、「作業を把握できていない」ことによって「全てに手をつけるが何も進んでいない状態なる」という簡単な因果関係がある。
パッと思いつく限り、集中できない状態はこれらの結果によってもたらされていると言える。
よくみると、「目の前のことを進められない」ことと「すぐ別のことを始める」こと、「途中で別のことに注意を向けてしまう」ことなどは同じようなことを言っている。
こういうほぼ同じものやにたものをまとめ、少し書き足しつつ結び直したものが図2になっている。
4.論理関係をチェックし、必要なエンティティを追加する
図2のままでは少し見づらいので、整理したものが図3
こう見てみると、「すぐ別のことを始める」に集まっているような気もする。トランプや寿司打は、別のことの具体例なので「目的がそれ自体になる」は「すぐ別のことを始める」と同じと考えていいだろうし。
いつの間にか別のことを始めてしまっていることが集中できていない時のパターンみたいだ。
しかし、なぜ別のことを始めてしまうのだろうか。
「別のことを始める」前段階には、「ものが見つからない」「作業を把握できていない」「落ち着かない」「目的がそれ自体になる」がある。
考えてみれば、「別のことを始める」時には、そのときの「作業が中断」してしまっていることが多い。
落ち着かなくて別のものに注意を向けてしまったり、トランプを触り始めてしまったり、物を探し始めたり。
それを踏まえて、さらにエンティティを追加していったものが図4になる。
ちょっと急に細かくなった感があるが、注目してほしいのは「作業が中断する」にさまざまな要因から集まり、「いま何をしているのか忘れる」が「やるべきタスクが明確でない」ことによってタスクに戻ることができず、「すぐ別のことを始める」という流れで最終的に「全てに手をつけるが何も進んでいない状態」になってしまうということだ。
別のことをどんどん始めてしまうことによって、一つのことが進んでいないことがわかる。
5.現状ツリーを完成させ、悪循環ループ、中核問題、根本原因を発見する
「中核問題」はもはやわかりやすい。
さまざまな要因から、「作業が中断」してしまうことから始まりそれまでやっていた作業を忘れて「すぐ別のことを始めてしまう」という流れが進まないことの原因である。
結果として生じる「全てに手をつけるが何も進んでいない状態になる」ことによって、修士論文は進まず、進んでいないことに焦りを感じることで「不安なことがある」状態になる。
そして、やばいやばいという焦りから妄想が始まり「作業が中断」し、「別のことを始め」、、、、、、
という悪循環ループ。
どこから手をつければいいのか
「作業が中断する」ことが発端となって、作業が進まなくなっていることがわかった。
しかし、「作業を中断しないようにする」は解決策にはなかなかならない。
それは作業が中断してしまう要因が多すぎるからだ。
それぞれの要因にそれぞれの対処をしていかなくてはいけない「作業を中断しないようにする」という解決策は得策ではない。
中断してしまった後、「いま何をしているのか忘れる」という工程があるが、その時「やるべきタスクが明確でない」ことによって「タスクに戻れない」ことが「すぐ別のことを始める」ことにつながっている。
つまり、「やるべきタスクを明確にする」ことが最初にするべき対処だとわかる。
そうすることで、どんな要因で作業が中断したとしてもやるべきタスクが明確なのですぐに戻っていくことができるだろう。
いつの間にか「集中できないこと」を研究するはずが「作業を進めること」になっているが、とりあえずは「やるべきタスクを明確にする」ということに手をつけるのがやるべきタスクである(明確化!!)。
というわけで、次回からは「やるべきタスクを明確にする」研究になる。
タスク管理のやり方の研究。
次↓