スクールカウンセラーの今とこれから


スクールカウンセラーの今

スクールカウンセラーの歴史

 スクールカウンセラーは学校に配置される心理の専門家で、児童・生徒、保護者、教職員を対象に心の健康や学校生活の悩みに関する相談・支援を行う人のことで、日本では1995年から文部科学省の事業として配置が進められ、現在では多くの小・中・高校に配置されている。

 スクールカウンセラーの歴史は以下のように分けられる。

★第1段階:萌芽期(1950年代~1980年代)★

1950年代:一部の大学や企業でカウンセリングの試みが始まる。
1960年代:学校現場で教育相談の必要性が認識され始める。
1970年代:文部省が「教育相談研究委託事業」を開始し、スクールカウンセラーの配置が試行的に行われる。
1980年代:いじめ問題が深刻化し、スクールカウンセラーの必要性が高まる。また、中高を中心に校内暴力が活発化し、少年非行の検挙数者が戦後最大にまで登った。

★第2段階:導入期(1990年代)★

1990年代:不登校の児童生徒の割合が急激に上昇し始めた。
1992年:登校拒否児童生徒数は7万人を超える。
1994年:いじめによる自殺者が増加し、いじめ対策緊急会議が緊急アピールを出した。
1995年:「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」が開始され、全国の小中学校にスクールカウンセラーが配置される。これはいじめや不登校といった児童生徒の多様化に伴い臨床心理士等の心理の専門家を学校に派遣しカウンセリング等による心理ケアの充実を目的としたものである。非常勤職員としての採用で、全国154校から始まった。
1997年:阪神・淡路大震災が発生し、被災した児童・生徒の心のケアのためにスクールカウンセラーの役割が注目される。
1998年:中央教育審議会が「すべての子どもがスクールカウンセラーに相談できる機会を設けることが望ましい」と提言する。また、SCの派遣がおよそ10倍の1661校になった。

★第3段階:発展期(2000年代~現在)★

2001年:「スクールカウンセラー等活用事業」が開始され、スクールカウンセラーの配置が進む。
2007年:公立中学校全校にスクールカウンセラーを配置する目標が掲げられる。
2008年:「スクールソーシャルワーカー活用事業」がスタートし、教師とSCのみならず多職種が連携し合いチーム学校の理念が形作られていった。
2017年:学校教育法施行規則が改正され、スクールカウンセラーの職務が明確化される。
2018年:スクールカウンセラー活用事業の実施要領が改正され、公認心理師がスクールカウンセラーの選考基準に追加される。
2021年:SCの配置が30000校にまで登った。

スクールカウンセラーの制度

 スクールカウンセラーの資格要件は、臨床心理士や公認心理師などが一般的で、他にも精神科医や一定の条件を満たした大学教授等も含まれる。
 スクールカウンセラーの活動内容は、児童・生徒の相談対応、教職員への助言、保護者への支援など多岐にわたる。不登校児・生徒へのカウンセリングに注目されがちだが、教職員への研修会の開催等も重要な職務の一環とされている。

スクールカウンセラーの業務

1. 児童・生徒への支援

  • 学校生活での悩みやストレス、人間関係のトラブル、家庭の問題などについて相談

  • いじめや不登校、発達の特性に関する対応(発達障害や知的障害、その他精神疾患への対応)

  • メンタルヘルスの維持・向上(健康保健衛生)

  • カウンセリング:個別またはグループで、児童・生徒の抱える悩みや問題(いじめ、不登校、友人関係、家庭環境、学習意欲の低下など)について

  • 心理検査:必要に応じて、児童・生徒の心理状態を把握するための心理検査(発達検査、性格検査など)を実施

  • い場所づくり:安心して過ごせる居場所を提供し、児童・生徒の孤立感を解消する

2. 保護者への支援

  • 子どもの問題行動や発達に関する相談

  • 育児ストレスや親子関係の悩みへのアドバイス

  • 必要に応じて外部の専門機関(病院、福祉機関など)と連携

  • 情報提供:子育てに関する情報や、利用できる支援制度などを提供

  • ペアレントトレーニング:子育てスキル向上のための講座やワークショップなどを開催

  • 家庭訪問:必要に応じて家庭訪問を行い、家庭環境の把握や支援を行う

3. 教職員への支援

  • 児童・生徒への対応に関する助言

  • 先生自身のメンタルヘルスサポート

  • 校内研修やケース会議への参加

  • コンサルテーション:児童・生徒への対応やクラス運営に関する相談に応じ、専門的なアドバイスを行う

4. 学校・地域との連携

  • 教育委員会や児童相談所、医療機関、福祉機関などと連携し、支援体制を整える

  • 学校全体の教育環境の改善や、生徒の心のケアに関する啓発活動

  • 環境改善:学校全体のメンタルヘルス向上に向けた取り組み(いじめ防止対策、ストレスマネジメント教育など)を企画・実施

  • 危機管理:事件・事故発生時の緊急対応や、児童・生徒の心のケア

スクールカウンセラーのこれから

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