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トレーラーハウスの企画開発 No.05【プランニング】

本記事ではトレーラーハウスの企画開発について解説をしています。第5回目のテーマは【プランニング】です。

 

住宅より難しい?トレーラーハウスの【プランニング】

トレーラーハウスには住宅設計には無い、独自のプランニング上の注意事項があります。外形サイズ、重量、重心の3つの注意事項です。外形サイズとは法的なサイズの制限、重量とはシャーシの最大積載荷重の制限、重心とは走行時の安全性のことを指します。

この3つを守りながらプランニングをすることが必要です。以下、車検付き20ftシャーシをベースにしたトレーラーハウスを例にプランニングのポイントを解説してゆきます。

 

外形サイズの設計

①幅・長さについて

車検付きシャーシでの設計の場合、積載重量の制限から最大長さ(12m)を超えることはまず無いかと思います。そうしますと重要なのは短辺幅の設計になります。

20ftシャーシへの積載ハウスとした場合、仮にハウスの短辺方向の壁通り芯を2180㎜としてみましょう。構造も仮にツーバイフォー工法としてみます。壁芯材厚は89㎜となりその上の構造用面材を9㎜とした場合、通り芯からの外壁面材までの寸法は89㎜/2+9㎜=53.5㎜となります。

この構造体に金属サイディングを納めたと仮定しましょう。その場合の厚みは通気層18㎜+金属サイディング厚16㎜=総厚34㎜となります。ここで通り芯からの追い出した短辺方向の全体幅を確認してみます。

短辺方向の全体幅=2180㎜+53.5㎜×2+34㎜×2=2355㎜

さらに屋根水切り等の出寸法やサッシ枠、玄関ドアのハンドル、吸排気用の外部フードなどの出寸法がプラスされます。そのうえで2500㎜以内に納めることが必要になります。他工法の場合はそれぞれの壁厚に準拠したうえで同様の設計検討が必要です。

②高さについて

高さはシャーシを含めたうえで全長3800㎜を超えない高さに設計をします。室内天井高さを確保するためには、屋根形状はフラット屋根か緩勾配屋根が有利です。

住宅用工法でフラット屋根と緩勾配屋根を比較しますと、フラット屋根の場合はパラペットの立ち上がりが発生しますので、内部の天井高さを稼ぐことが難しくなる場合があります。ディテールの確認が必要です。

従いまして、住宅用工法でハウスを設計する場合、ベストな屋根納まりは緩勾配屋根ではないかと思います。もちろん、コンテナを利用する場合はその限りではありません。

 

重量の設計

①最大積載荷重へのアプローチ

車検付きシャーシを使ったトレーラーハウスの場合、ハウスの総重量はシャーシの最大積載荷重によります。一般的に20ftシャーシの最大積載荷重はシャーシ会社様によって異なりますが、概ね2500kg~2750kgあたりであるかと思います。

ここでもシミュレーションをしてみます。例えば、シャーシの最大積載量が2700kgとした場合です。ハウス構造体の重量が金物含めて1400kgとしましょう。そうしますと残りは2700kgー1400kg=1300kgとなります。

この他に最低限必要なものとして、屋根材、外装材、内装材(石膏ボード、壁紙、床材)、サッシ、照明、空調(エアコン含む)、断熱材が加算されます。これらの重量を概ね1000kgとした場合、1300kgー1000kg=300kgとなります。残り300kgの範囲内で水回り設備などを展開しなければなりません。

重量的にはあまり余裕がありません。例えばコンパクトなシャワーブースでも80~100kg、陶器の便器は20~30kgほどになります。

ハウス設計の際には躯体から仕上げまで全てにおいて軽量化を前提とした重量設計が必要であるということは、このシミュレーションを見てお分かりいただけるかと思います。

②重量の軽い建材へのアプローチ

そこで、すべての材料に対して軽量化へのアプローチが必要になります。しかし構造躯体は軽量化が難しいため、外部内部及び設備関係の様々な建材に対して軽量化のアプローチを行う必要があります。以下、軽量化に有効と思われる建材をいくつかご紹介したいと思います。

③外装材

住宅系の外装材の中では、金属サイディングと樹脂サイディングが軽量化に適しています。窯業系のサイディングは重量が重くなりますので、外装に関してはこの二択かと思います。木製サイディングも軽量ではありますが、自然素材なので経年変化が伴います。設置する場所やお客様のご理解を踏まえたうえで検討をされた方が良いかと思います。

④屋根材

屋根材は金属屋根を推奨します。こちらも重量的なメリットからです。その際、基本的に縦葺きの金属屋根になるかと思います。横葺きの金属屋根は緩勾配に対応していない場合がありますので確認が必要です。

⑤内装下地材

内装下地材は石膏ボードを貼るケースが多いと思います。ただし石膏ボードは重量が重くハウス全体の総重量割合としても大きなウエイトを占めています。この内装下地材を軽量化する手段の一つとして、一部の石膏ボード会社様から重量の軽い石膏ボードが販売されています。通常にクロスも貼れますので、内装をクロス仕上げにする場合にはお勧めです。

⑥キッチン

扉や側板などの面材が無い、カウンターとフレームだけで構成されているキッチンですと軽量化が期待できます。カウンターについても人造大理石ではなく、ステンレストップの方が軽量化には向いていると思います。

⑦トイレ

一般的な便器はほとんどが陶器製のもので重量は重いですが、一部の建材会社様では有機ガラス製の便器を販売しています。陶器製のものより重量が軽くなりますのでお勧めです。

⑧エアコン

エアコンについては各メーカー様によって重量の差があります。室内機だけでなく室外機においても重量の差がありますので、室内機と室外機の両方を比較して選択されることをお勧めします。

 

重心の設計

①重心設計の重要性

重量だけではなく、重心のバランスを整えてゆくことも必要です。牽引して公道を走行しますので、重心が極端に偏っていますと走行時のバランスを欠くことになります。

あまり馴染みのない重心という概念ですが、国土交通省からは、海上コンテナの陸上運送の安全対策をウエブサイトで公開しています。積荷の位置による車両のバランスや運転の仕方による影響を垣間見ることができるかと思いますので、参考になるかと思います。※国土交通省ウエブサイトより引用

重心の設計の中で注意すべき点の一つとしてスネーキング現象があります。こちらについては日本国内では情報が少ないですが、海外では参考になる情報がいくつか発信されています。

YouTubeで、trailer Towing weight  などのキーワードで検索をしますと、トレーラーハウスを含む牽引輸送でのスネーキング現象の注意喚起を解説した動画を見ることができます。こちらも参考になるかと思います。

②間取り設計の影響

重心設計で影響のある項目の一つとして、間取りの設計による影響が挙げられます。特に重量の重い水回り設備の配置には注意が必要です。間仕切り壁も両面が石膏ボードである場合は、重心に影響を及ぼしかねない重量になることがあります。水回りの配置においては設備の重量だけでなく、水回りを区画する間仕切り壁の重量も考慮しておく必要があります。

トレーラーハウスはコンテナ内の積荷の配置とは違い、設計者がプランニングと連動して重心の配置を設計することになります。重心が極端に偏らないよう、設計段階で十分に配慮をしていただくことをお勧めします

 

まとめ

以上、プランニングにおける基本的なポイントを、サイズ設計と重量設計と重心設計を中心に解説をしてきました。実際のプランニングにはこの他にも注意すべき点が多々あります。法令順守と安全順守を第一として、プランニングを行っていただければと思います。

次回更新は11月25日(土曜日)AM10:00を予定しています。

 

本記事はトレーラーハウスの企画開発に向けたアウトラインをテーマにしておりトレーラーハウスに係る全ての法律技術要件を解説しているものではありません。トレーラーハウスには多くの法律技術要件が関連しています。開発を行う際はご自身で十分ご確認のうえ開発をお願いします。

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