「ロブスター」(2015)ネタバレあり
基本情報
『ロブスター』(原題:The Lobster)は、ギリシャ・フランス・アイルランド・オランダ・イギリス合作の2015年のSF恋愛映画。監督はヨルゴス・ランティモス。同監督初の英語作品であり、第68回カンヌ国際映画祭において審査員賞を受賞している。-Wikipedia
ログライン
妻を亡くした男は45日以内に次なるパートナーを見つけないといけない。さもなくばロブスターに変えられてしまう。
ストーリー
もう設定がずるい。動物に変えられるってどういうこと?ってなる。だが、本当に面白いのは「恋をしなければいけない」ディストピアで恋ができず抜け出したら「恋をしてはいけない」コミューンで恋に落ちてしまうという逆転現象。この設定が面白いのに、更にもう一段ギアを上げられる深さを持った映画はなかなかないのではないか。例えばパラサイト。金持ち一家に寄生していくだけで面白いのに、更に貧乏な別の家族が出てくるなんて贅沢な海鮮丼かよ、っていう気持ち。
でも、この面白さを成り立たせているのは「恋愛・結婚」というテーマに対し、二つの世界がもつ相反する意見のためであると思う。
・脱走者がいて、それを参加者に狩らせ、それによって残存日数を増やすという設定がとてもよくできている。
演技・演出
・冒頭にヤギ?を撃ち殺すインパクトのある出だし。なぜ撃ち殺した?ってなる。
・背中に痛みを和らげる軟膏を塗る、というのが話の中では全く重要ではないにも関わらず、主人公の特徴の一つになっている。(しいて言えばひとりでは背中に軟膏を塗り切れない、痛みを和らげ切れない、という孤独への問いに絡めた設定ともいえる)
・最初に二人だけのサインを決める、という下りがあり、脱走という一番大事なことを伝えるときに直接言うのではなく、そのサインを口頭で説明する。私たちはレイチェル・ワイズの表情とナレーションから脱走についてのことだと知る。直接脱走しよう、というよりもオシャレで抵抗なく入ってくるやり方。
・全てのパーツがうまく絡み合っている。例えばパートナーがいる場合、いない場合についてのバカげた実演の中で喉にものを詰まらせるというジェスチャーがあったあと、氷の女が主人公を試すためにそれを使う。そしてその後、兄(犬)をけり殺したという女の残酷な描写を観客は疑う。だが主人公が起き上がると、血まみれの脚が目に入り、先ほどの詳細な描写はリアルだったのだと私たちは思い出す。
・謎が出てきてから答えがでる。例えばブタを連れていて、そのあとトリュフの下りが出てきたり、麻酔銃が出てきてから、脱走者狩りの話が出るなど。
・モノローグは禁じ手として扱われるが、終盤でこれがレイチェルワイズ視点であり、更にそのノートを落としてしまい、敵が読み上げている、ということがわかった瞬間、モノローグとしての意味が出てくる。クリストファー・ノーラン「プレステージ」なども同じやり方。
撮影
・気になるところですごく僅かにズームインする箇所が何回もある。おそらくデジタルズームだと思う。本当に気づかないくらい。それが嫌味にならない程度に緊迫感を押し上げる。
・大自然のヒキの絵がとても多いが、ヒキからドリーで追いかけていくサイドショットになったりとダイナミックさもある。
・建物は廊下や階段など、キューブリックのようなきちっとした構図。それが規律に縛られた建物内をよく表現している。
・狩りのシーンや街に出るシーンのスローモーションが音楽と相まっていい非現実感を出していた。
好きだったところ
・最初に散髪についてのレクチャーがあるのに、同じ部屋にいる女性が全く同じ散髪のことを再確認する。これだけでその女性のコミュニケーション力がとても低いことがすぐわかる。
・全体がとてもシリアスなのに「パンツがキツイ」とかちょいちょいコミカルなシーンが入る。
自分だったらどう撮るか/盗めるポイント
・冒頭はとにかくインパクトと謎を残す。
・大事なことを伝えるときは間接的に伝える方法がないか探る。暗号化。そして伏線をうまく回収できるように。
・モンタージュはスローを入れてみては。
画像引用元:
https://www.grandcinema.com/gcblog/lobster-review-romance-in-absence/
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