ある凡庸な記念日
当然鬱病ハバネロは芽吹いていなかった。
期待した雨も降ってなかった。
薄暗がりのなか、静かに雨音を聞いていたかった。
ルーズリーフを買いに書店へ行き、大学図書館へ行き、スーパーの帰りに古本屋へ立ち寄った。
今日はどうしても一冊欲しかった。
常田大希がWebの記事で安部公房の『砂の女』を挙げていて、実は心の何処かでずっと探していた。
文庫版の砂の女が無いか丹念に棚を探す。
無かった…。
が、谷崎潤一郎の刺青があって其れが面白い表紙だった。
文豪の本は集中的に読んだことがない。
近頃は物語と距離をおいて、
落合陽一の思想とか芸術論などを少し無理して読んで気疲れしてしまった。
(当然これらの本は一つの文学としてとても面白かった)
でも今は文豪を追ってみたいような気がする。
未だ僕はほんとうの読書の愉しみ方を解ってないんだろう。
世界が開けるような感覚が欲しい。
刺青の裏表紙に、『青年の脳裡に「発酵する怪しい悪夢」が「甘美にして芳烈なる芸術」に転じる時』と書かれている。
『内心に荒れ狂う嵐とともに』
今の僕と吻合する一冊だ。