邦楽アーティストは、どれくらいサブスクで聞けるか?
小袋成彬氏がラジオで発言していたとおり、音楽ストリーミングがこれだけ世界で普及しても、日本ではまだ音楽消費のメインストリームたりえず、こんな悲しいミスマッチが起きてしまう。
なんかね、こっちの人はSpotifyユーザーの方が圧倒的に多いんですよね。僕の肌感覚では8割、9割ぐらいはSpotifyユーザーなんですよ。で、この前悲しかったのが、「日本の音楽を聞かせてくれ」って言われて。その人は「ブルースが好きだ」って言うので、なぜか僕はaikoを思い出して、aikoをAppleMusicで探したら1曲もないんですよね。すごい悲しい思いというか、「ああ、またチャンスが……」って思っちゃったんですけど。
SpotifyやApple Musicに代表される音楽ストリーミングは2010年代をかけて世界の音楽市場を急速に回復させてきた。一方で日本の音楽市場は、未だに7割以上が音楽ソフト(CD、BD&DVD、etc…)に依存している。
結果、CDの売上が下がるかもしれないから、など様々な理由をつけて日本の音楽業界は音楽ストリーミングに対して非常に慎重な姿勢で接してきた。
一方で、あいみょんやOfficial髭男dismなど、サブスクをきっかけにメインストリームに躍り出るアーティストが出てきている中、レーベル、アーティストともに、サブスクの存在を無視できなくなっていることも事実だ。
では、現在の邦楽市場ではどれくらいのアーティストがサブスクに楽曲を配信しているのだろうか?
全貌をつかむことは当然難しいので、主要なところがどの程度出ているのか、もっと言うと、人気の高いアーティストがどれくらい出ているのか、を調査してみた。
今回「アーティスト人気」の指標として、オリコンが毎年末に実施している第15回 音楽ファン2万人が選ぶ“好きなアーティストランキング”2018を使用した。
・上記ランキングの全年代結果上位20位のサブスク解禁状況を調査。
・同時に世代間の差を見るために10代のランキング上位10位、40代のランキング上位10位も同様に調査。
・解禁状況は新譜も旧譜も全解禁は○、部分解禁(新譜のみ・旧譜のみ)、特定サービスのみ解禁は△、まったく解禁していないは×とした。
・備考に解禁の時期や状況を記載した。
解禁状況結果(全年代ランキング編)
20位までのアーティスト中9アーティストが全解禁。3アーティストは何らかの制限がかかっている。20位内の解禁率は○を1、△を0.5とすると、10.5/20で52.5%。半数は上回っている。これが2年前の17年時点だと、7アーティスト減る(○が-4、△が-3)ので、5/20=25.0%と全体の1/4にしかならない。
解禁状況結果(世代別ランキング編)
こちらは世代間での差が多少出ている。(もっと出ていると思ったがそこまでではなかった。)10代の解禁率は○=6、△=1、×=3で65%。40代の解禁率は○=4、△=2、×=4で55%。
総論
ジャニーズのように、デジタル空間にプロパティを出すこと自体に慎重な事務所を除くと、10年代後半目以降に活躍しているアーティスト(乃木坂、欅坂、あいみょん、back number)は解禁している傾向が見える。これは、そもそもCDがダウントレンドの中デビューしている世代であることも関係しているだろう。ただし、米津玄師のように一切解禁しない(ダウンロードやYouTubeへのMV配信はしているが)アーティストもおり、その理由はあずかり知れない。
また、17年後半くらいから解禁し始める大物アーティストも多い。日本における音楽ストリーミングは2015年にApple Music、LINE Music、AWAがローンチされることで本格的にスタートし、16年10月にSpotifyがローンチされたことでサービス側はある程度出そろったと言っていい。そういう意味で、様子見をしていたアーティストがその意味や意義に気づき始めたのがこのころの時期だったのではないか。
いずれにせよ、現状に至ってなお人気アーティストとされる20組のうち半数程度しか聞けないという状況は、音楽サブスクを決定的に日本に普及させる上では足りないと言わざるを得ない。
音楽サブスクは、世界の音楽市場をガラッと変えたわけだが、その本質がまだそれぞれのアーティスト(ないしはレーベル)に正しく理解されていないとしか思えない。
・世界を市場にできる。・不労所得が得られる。・データを元にした意思決定ができる。・ファンコミュニティをつくれる。etc... こうしたサブスクの特徴・利点を啓蒙し続け実際に活用し血肉化させるしか方法はないだろう。
本noteでも引き続きこれら利点をきちんと説明していきたい。
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