🐰【アナログ音、明日に響く原点】【「聴く」にこだわって40年余、「書く」にも力点】茅ヶ崎方式英語会の学習誌「茅ヶ崎方式･季刊LCT」

まだインターネットが普及する前の1980年代、英語の文法はひと通り身に着けたつもりだったし、目標の資格試験も首尾よく突破していました。しかし、英字新聞がすらすらと読めるかというとそうでもなくて、当時貴重な英語ニュースの音源だったNHKの夜7時のニュースの英語音声も、すっと耳に入ってこない部分が少なくありませんでした。

そんな頃、書店に足を運ぶと、「茅ヶ崎」という名の見慣れない語学教材が目につくようになりました。茅ヶ崎と言えば、サザンオールスターズを率いる桑田佳祐さんの故郷だということくらいしか知りませんでした。しかし、同じ神奈川県茅ケ崎市を「原点」に、ニュースを題材に徹底的に「聴く」ことを重視した全国規模の英語学習ネットワーク「茅ヶ崎方式英語会」が活動していて、ニュース英語の語彙集など、そこから生まれた教材が書店に並ぶようになっていたのです。NHK 国際放送の英語記者を務めた方々の手によるものだというのは、新聞記者を志すことになる私にとっては、大きな魅力でした。

さっそく買った茅ヶ崎の語彙集を手に英字新聞を読みました。当時FM 放送で聴くことができたNHKの夜７時のニュースの英語音声は、ラジカセのタイマーで録音し、夜遅く帰宅してもボタンを押せばニュースが流れるようにしたうえで、今となっては懐かしい「オートリバース機能」で何度でも聴きました。分からない単語があればその語彙集でチェックする日々。受験英語とは違った語彙やニュースのスタイルの基礎をこの段階で得たことが、のちに新聞社に入り、国際報道や英字版で記者やデスクの仕事に携わるのにつながったのだと思います。

それから何十年も時が流れたある日、語学仲間から「茅ヶ崎方式英語会が学習誌を復活させる」と耳にし、私も喜び勇んで購入しました。一世を風靡した茅ヶ崎の学習誌や書籍は経営上の問題もあり、いったん書店から姿を消していました。私自身、忘れかけていた「原点」に立ち返る思いでした。

人生とは不思議なものです。それからひょんなことでご縁があり、その学習誌でコラム「五十路の坂、白い雲」を執筆する機会をいただきました。さらに当時の大美賀廣芳社長から「英文ライティングの教材を作ってほしい」という打診をいただき、「4,000語で読む生ニュース　読み解き、ライティングにつなげる」と題した連載を始めることになりました。新聞社を早期退職していた私にとっては、日本語と英語で長年格闘してきたことが生かされる貴重な仕事の機会でもありました。（連載は2023年4月発売分から「元記者と挑む生ニュース  　読み解き、ライティングにつなげる」と改題）

その後、2021年夏からはオンライン講座「元記者と挑む生ニュース」シリーズを担当する機会もいただきました。社長を引き継がれた久富奈保子・編集長のもと、今では「茅ヶ崎方式･季刊LCT」と呼ばれるようになった学習誌でのコラムや教材の連載も含め、現在に至っています。

季刊LCT (雑誌) - 茅ヶ崎方式ブックライブラリー

さらに思わぬご縁がありました。私は東京出身なのですが、父の転勤で小学６年から中学を卒業するまで三重県鈴鹿市に住み、通った中学は津市の高田中学という私学でした。この学校の大先輩が、復活した学習誌の初代編集長の中西哲彦先生です。著書に「完全攻略! 英検(R)1級（アルク刊）」「足すだけ英会話トレーニング（中西哲彦著 株式会社アルク刊）」があり、同じ「茅ヶ崎方式･季刊LCT」で｢足すだけライティング講座｣と題した連載をされています。さらに、オンライン講座「英語解剖学的アプローチ『核を見抜く』｣も担当されていて、まさに茅ヶ崎の重鎮でいらっしゃいます。

2021年夏、オンライン講座をスタートさせるにあたって、【対談】特別セミナー「日本語ネイティブとして英語を学ぶ」でご一緒しました。茅ヶ崎と高田中学の二重のご縁を感じ、震えるような感慨を覚えました。

ところで、このコラムのタイトルである「アナログ音、明日に響く原点」は、「茅ヶ崎方式英語会」が40年の節目を迎えた2021年、「茅ヶ崎方式･季刊LCT」の36号（October-December 2021）の表紙などを飾ったフレーズです。「聴く」にこだわった40年を踏まえ、「書く」にも力点を置く新しい展開をイメージしたものです。

その「茅ヶ崎方式英語会」は全国各地に「協力校」があり、「茅ヶ崎方式･季刊LCT」は、オリジナルのニュースとその音声教材を起点とする「茅ヶ崎方式」を誌面で再現するものでもあります。加えて中西先生や私の連載、さらに「Writing Training」のコーナーもあり、学んだ基礎を「英文ライティング」につなげる道筋を提供しています。

茅ヶ崎方式･季刊LCTは、紅一点の花のように、書店の一角でも咲いています。協力校「英会話CHAT 茅ヶ崎方式名古屋緑校」も運営されている久富編集長のご地元・名古屋の三省堂書店名古屋本店もその一つです。

三省堂書店名古屋本店にて（撮影：茅ヶ崎方式英語会）

以下の通り、オンラインでも購入できます。

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ネット時代にあって、手づくりの教材はほんわか温かいです。ぜひ、ご愛読、ご活用をお願いいたします。

茅ヶ崎方式 季刊ＬＣＴ編集委員
飯竹恒一