🎄【神宮の森を守れ!】坂本龍一さんの遺志を継ぐイベント「会場の🌱苗を持ち帰って植えて!」と粋なアナウンス
【写真】坂本龍一さんの遺志を継ぐイベント会場=東京・明治神宮外苑(撮影・飯竹恒一)
亡くなる間際に「先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません」という内容の手紙を、神宮外苑再開発を推進する東京都の小池百合子知事らに送った坂本龍一さん。
その願いを受け止め、緑豊かな神宮外苑を次の世代に引き継ごうと呼びかけるイベントが4月22日夕刻から、現地でありました。
私は仕事と重なってしまい、メトロの外苑前駅に着いたのが午後7時半。駅を駆け上がり、イチョウ並木を足早に抜けると、何百人もの人が、しっとりとした追悼ソングに酔いしれていました。
そろそろ予定の終了時間という頃。「会場にある苗を各自持ち帰って植えてください」というアナウンスが鳴り響きました。視線を落とすと、なるほど地面の一角に、さまざまな色の花が咲く小さな苗が散りばめられています。
粋なはからい! 私は薄ピンクをひとつ、ありがたく頂戴しました。帰りがけ、坂本さんと一緒に、記念写真を撮りました。
外苑前駅に戻る途中、神宮球場の前を通ると、まだ続くプロ野球・ヤクルト対巨人戦の熱気が伝わってきました。開放感いっぱいのスタンドだからこそ、選手の名前を告げるアナウンスも、ファンがからす声援も、心地よく夜空に響きます。
神宮外苑再開発が事業者側の計画通りに進むと、神宮球場は取り壊されます。新球場は、同様に解体される秩父宮ラグビー場と敷地を交換する形で、高層ビルの谷間にできることになります。ビルの圧迫感から、現在のような力いっぱいのプレーや応援ができるのか。大学野球も含め、野球ファンのみなさんには改めて、野球の「聖地」である神宮球場の改修による存続について、その意義を確認していただきたいと思います。
その点、すでに先行する解体工事が始まっていた隣の神宮第二球場に目をやると、胸が痛みました。熱戦に沸く神宮球場に「お前には生き延びてほしい」と語りかけているかのようでした。
再びイチョウ並木を歩きました。仲睦まじいカップルやひたすら走るランナー。気の向くままに写真を撮りましたが、どのコマを見ても、圧倒的な緑に心打たれました。改めて、「神宮の森」だと実感した次第です。
「このイチョウ並木に手をつけてほしくない」。一帯の温もりに触れたら、誰だって、そう思うはずです。
人間の活動は農業も含め、言わば自然破壊の一面を持っています。ですから、開発をすべて否定はしません。しかし、だからこそ先人は、丹念に木を植え、空間を確保し、憩いの場を創出してきました。それが良心であり、理性であり、誠意だと思います。
その象徴が、神宮外苑です。
ですから、東京都や事業者のみなさんには、いったん立ち止まって、理念ある節度を胸に、改めて考え直していただきたいと切に願います。
***
薄ピンクの苗は帰宅後、 昨秋亡くなった母のもとにまず届けました。
坂本さん、そしてお母さん、安らかに眠ってください。
神宮の森、永遠に。
(飯竹恒一)