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SPAC『イナバとナバホの白兎』@11/3 静岡芸術劇場

楽しみにしていた、SPACの舞台『イナバとナバホの白兎』。静岡に行く予定があったため、日程を合わせてチケットを取り、無事鑑賞できました。

いなばの白うさぎの物語は、北米先住民の伝承神話にも存在していた?!

20世紀最大の思想家・文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースによる仮説を、演劇的想像力で読み解く壮大な祝祭音楽劇です。

公式サイトより

3部構成。第1部は日本の因幡の白兎伝説、第2部は北米のナバホ族の起源神話、そして第3部はその二つの伝説の元となった(かもしれない)、元々大陸にあった(かもしれない)伝説のお話です。

劇場前の掲示板

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SPACはムーバー(動き手)とスピーカー(語り手)の二人一役による演劇表現が特徴的な劇団です。できる限り時間を作って見に行くようにしていますが、本作品は何度か過去に上演しているものの、自分は初めて観る舞台です。自分の理解が浅く、消化しきれない部分が多すぎますが、初見舞台の感想を、徒然なるままに。

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第1部。舞台が薄い御簾のようなもので区切られる中、日本の古事記の伝説が語られていきます。御簾の前でムーバーが演じ、奥ではスピーカーと演奏者たちが演じます。舞台エリアは上から見るとひょうたんに見えるような形で大胆に区切られており、「ちょっとムーバーのスペースが狭くないか?」と思いつつ、古事記のお話が進みます。演者が生演奏するメインの楽器は、和太鼓系の打楽器です。

ワニザメに毛を剥がれた白兎が、大穴牟遲神(のちの大国主)の助言を受けて回復するところは、因幡の白兎伝説の一部として知っていました。ただ、その大穴牟遲神が八十神(スサノオ)からの試練を受け、木の間に挟まれるエピソードなどは、全く知りませんでした。本番前のプレトークでも「古事記は話がバラバラになっている」ことの話は聞いていましたが、古事記はちゃんと読んだことがなく、全く知らない話ばかり。古事記は別の機会に少しずつ読んでみたいと思います。

ラストに、大国主はスサノオから弓矢などの武器を与えられて国作りを始めますが、なぜか琴も授けられます。そんな伝説だったのか、、、(後でインターネット検索したところ、確かに琴を授けていた伝説のようです。)

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第2部。今度は、御簾の奥でムーバー、前でスピーカー。ここでは、北米のナバホ族の神話伝説が語られます。第1部もそうですが、紙芝居というか、絵巻物のような表現です。音楽もテイストが変わり、アメリカ原住民の民族音楽のような風味が入ります。

これは、自分たちの親である "太陽神" を探し求めて旅する双子の話です。日本の双子関連の神話は物騒な内容のものが多い記憶なので、双子が仲良く旅する伝説は日本ではなかなか見ないお話かも、とぼんやり考えながら観ました。

双子が花粉になって、アメンボの背に乗って海(川?)を渡る描写はなぜかSPAC作品で観た記憶があるのですが、他の場面を全く覚えていないので、観たことはない作品のはず。何の記憶か全く思い出せません。ナバホ族の神話は全く知らないので、こちらも元のお話を読んでみたいと思います。(書籍化されているのだろうか、、、)

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第3部。御簾が中空に上がり、舞台上に敷居がなくなります。ものがたりは、太陽の恵みを受け、人間の双子が作物の育て方を学び始めるところから始まります。

この第3部は、文化人類学者レヴィ=ストロースの大胆な仮説に基づいているとのことです。それは、「アジアの大陸部に起源をもつ神話の体系が、まず日本に伝わり、さらにベーリング海峡を渡ってアメリカ大陸に伝わった」という仮説。これは、その「大陸部に起源をもつ神話」のお話です。

場面の移り替わりが正面、側面と切り替わり、映像的な魅せ方が続きます。ムーバーの動きに合わせてスピーカーの立ち位置もコロコロ変わります。打楽器メインの生演奏は、屋内劇場で没入感たっぷり。

双子は父親を探し求めて旅しますが、双子は海を渡るときに一人失われ、ひとりきりになります。そして父親の太陽神の元にたどりつき、数々の試練の後に認められ、地上に舞い戻ります。双子の片割れである人間は、太陽神から与えられた武器を手にして地上に降り立つのです。

世界各地の太陽神関連の神話は、いつも戦争の起源のお話のはず。それを、「手にした武器を戦と争いのためではなく、歌と踊りに使ってしまう」という解釈が非常に新鮮でした。ただ確かに、世界各地に伝わる風習と結びついているように思います。正解がわからない仮説に基づいて、正解がわからない神話をSPACが独自に組み立てた舞台ではありますが、非常に説得力がありました。知らないことが多すぎましたが、唯一無二の表現は、SPACならでは。

またいつか、再演してくれることを祈りつつ。働こう。

夕方。雲が多い。
東静岡駅

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