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【全日本空輸(ANA)戦略分析③】プレミアム旅客市場とLCCのターゲット戦略
はじめに
こんにちは、戦略分析ラボです。
前回の3C分析では、ANAの主要市場である国内線・国際線、航空貨物市場の顧客ニーズと競争環境を整理しました。特に、国内線におけるJALとの競争、LCCの台頭、国際線では外資系航空会社との競争が激化している点が明らかになりました。
本記事では、STP分析(Segmentation:市場の細分化、Targeting:ターゲットの選定、Positioning:市場での立ち位置)を用いて、ANAのターゲット市場とポジショニングを詳しく分析します。
ANAのSTP分析
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Segmentation(市場の細分化)
ANAは、国内線・国際線において、異なる顧客層をターゲットとするため、市場を以下のように細分化しています。
① 国内線市場の細分化
国内線は、主にビジネス利用と観光利用の二大市場に分かれます。
ビジネス市場:羽田・伊丹・福岡・札幌などの主要都市間の移動が中心。時間の正確性、快適性、ラウンジサービスなどの付加価値が求められる。
観光市場:北海道・沖縄・九州などのリゾート地を中心とした需要。LCCとの価格競争が激しく、差別化戦略が重要。
地方路線市場:地方空港間の移動を支える市場。ANAは地方創生の一環として、地方空港ネットワークの拡充を進めている。
② 国際線市場の細分化
国際線市場は、出張・観光・貨物輸送といった異なるニーズに分かれます。
ビジネス渡航市場:欧米・アジア主要都市間の移動が中心。快適な機内環境やビジネスクラスの充実が求められる。
インバウンド観光市場:訪日外国人旅行者がターゲット。ANAは円安の追い風を活かし、地方空港への国際線就航を拡大。
航空貨物市場:EC需要や医薬品輸送の増加に対応し、貨物専用機の運航を強化。
③ LCC市場の細分化
ANAはピーチ・アビエーションを通じて、価格重視の顧客層をターゲットとするLCC市場にも参入。
国内短距離市場:主要都市と観光地を結ぶ低価格路線。
国際短距離市場:東南アジアや韓国・中国向けのLCC需要に対応。
Targeting(ターゲットの選定)
細分化した市場の中から、ANAが重点的にターゲットとする市場を整理します。
① 国内線:ビジネス市場とプレミアム需要を重視
ANAは、JALと競争しながらも、ビジネス需要を中心に高付加価値サービスを強化しています。
プレミアムクラスの強化:国内線でも快適なシート、機内食、専用ラウンジの提供により、出張利用の満足度を向上。
法人契約の拡大:企業向けに法人向けパッケージを提供し、長期的な顧客関係を構築。
② 国際線:ビジネスクラスとインバウンド需要の拡大
ANAは、欧米・アジアのビジネス客と、訪日観光客を主なターゲットにしています。
ビジネス客向けサービスの充実:機内Wi-Fi、長距離フライト向けのフルフラットシート、ハイクオリティな機内食を提供。
インバウンド観光の強化:日本国内の観光需要を取り込むため、地方空港への国際線就航を推進。
③ LCC市場:価格重視層の取り込み
ANAは、フルサービスキャリア(FSC)とLCCのハイブリッド戦略を採用し、異なる顧客層に対応。
LCC(ピーチ・アビエーション)の拡大:東南アジアや国内観光需要に対応し、LCC事業の拡大を進める。
ダイナミックプライシングの活用:データ分析を活用し、需要に応じた価格戦略を最適化。
Positioning(市場での立ち位置)
ターゲット市場ごとに、ANAがどのような立ち位置を取っているかを整理します。
① 国内線:JALと競争しながらも、プレミアムサービスを強化
JALとの差別化:ANAは機内Wi-Fi、ラウンジサービス、エコノミークラスの快適性向上を強化。
地方路線のネットワーク拡大:地域航空会社との提携を進め、地方都市間の利便性を向上。
② 国際線:アジア・欧米市場での競争力を強化
スターアライアンスを活用:世界的なネットワークを活かし、乗り継ぎ利便性を向上。
プレミアムエコノミーの強化:価格と快適性のバランスを重視し、新しい市場を開拓。
③ LCC市場:価格競争に対応しながら、FSCとのシナジーを活かす
ピーチ・アビエーションの拡大:国内線と国際線のLCC需要に対応し、収益基盤を拡充。
ANAとの連携:ANAのマイルプログラムや乗り継ぎ便を活用し、LCCとFSCの融合を図る。
まとめ
ANAは、国内線のビジネス市場と国際線のプレミアム市場を主軸としながら、LCC事業を拡大し、異なる顧客層を取り込む戦略を進めています。特に、JALとの競争が激しい国内市場では、プレミアムクラスの差別化が鍵となります。一方で、国際線市場では、訪日観光客の増加を追い風に、地方空港ネットワークの拡大を進めることが重要です。
次回は、4P分析を用いて、ANAの価格戦略とプロモーション施策を詳しく分析していきます。