Episode 054 「街はイルミネーション。君はイリュージョン」
さて、Episode 027より開始した「オーストラリアにいた時(1996〜2010年)によく聴いたアーティストおよびバンドの曲」(併せて、「よく聴いた訳では無いが印象が強く残っているアーティスト及び曲」も含む)、という括りで当時を振り返る試み、先ずはアルファベット順で紹介する内容をEpisode027〜Episode050にて終えた。続いては、あいうえお順(そう、日本のアーティスト)で振り返ってみる。今回は「か」及び「き」を見てみる。
ガガガSP(日本)
このバンドは、なぜかGoing Steadyと一緒にペアで記憶があるように思える。そう、歯ブラシと歯磨き粉、食パンとバター、ほうきとちりとり、フォークとナイフ、といった具合に。恐らく、この二つのバンドを聴いていた時期が被っていたからだと思われる。確か、2001年または2002年ごろだったと記憶する。特別に好きなバンド、という事ではなかったのだが、「卒業」という曲はなかなかパンチのある曲だと、当時感じた。このバンドは、歌も上手くないし、特に綺麗な声でもないし、見た目も決して良いわけではないが、この曲からは熱量が伝わってきた。そして、それが、こうやって(初めて聴いてから)約25年経っても、記憶に残っているという状態を作り出しているのであろう。尚、2021年の12月だろうか、このバンドのベストアルバムをbookoff onlineにて購入した。ただ、もちろん、「卒業」は、初めて聴いてから約25年が経った今も良い曲だなぁ、とは思ったものの、他の曲も併せて(大蔵公園でスケボーをしながら)聴いてみて強く感じたのは、「歌詞が恋愛についてばかりで、そしてその内容が女々しい」だった。あまりにも女々しいので、途中から腹が立ってきて、このアルバムを聴くのを止めてしまった。
河口恭吾(日本)
日本から送られてきたビデオに入っていた音楽番組で見たのが初めてだったと思う。この曲がリリースされたのは、2003年との事だ。なので、初めて聴いたのは、恐らく2003年あたり。特に思い入れがあるわけでもないが、頭に残っている曲ではある。
喜納昌吉&チャンプルーズ(日本)
このミュージシャンの存在を初めて知る事になったのは、Hi-Standardのベース兼ボーカルの難波章浩がネットのインタビューか何かで触れていた事がきっかけだったと記憶する。恐らく、2004年ごろの事だ。このバンドは沖縄の伝統的な音楽と西洋のロックの影響をブレンドしたバンドである。日本の友達に頼んで、「喜納昌吉&チャンプルーズ ゴールデン・ベスト」(2003年)というアルバムを送ってもらったのだ。尚、Def Techの名曲の一つの「My Way」は、このバンドの「花」がベースになっているとか。
木村カエラ(日本)
具体的に、どのタイミングでこの人を知る事になったのかは憶えていないが、恐らく日本から送られてきたビデオに入っていた音楽番組で見たのが初めてだったと思う。「リルラ リルハ」は2006年発売、との事なので、恐らく初めて聴いたのは、この時期だと思われる。「BEAT」(2006年)に関しては、奥田民生のプロデュースである。どうやら、木村カエラが奥田民生のファンであり、「奥田民生さんが得意とする、ギターのリフが効いている曲が良い」といった(確か)内容を奥田民生にリクエストしたとか。確かにこの曲は奥田民生節が炸裂している。つまり、誰が歌っても良い曲(つまりカラオケ映えする曲、という様な)、ではなく「奥田民生本人が歌うからこそかっこいい曲」という仕上がりになっている。奥田民生はインタビューで、「誰が歌っても良い曲と作るのは、ユニコーン時代にやり尽くしたから、ソロになった今は“自分が演奏して歌って初めてカッコ良い曲”に興味がある」と言っていた。改めて、(奥田民生は)他のプロのミュージシャンと比べても、一歩や二歩ではなく、三歩は先を行っている人だな、と感心せざるを得なかった。
銀杏BOYZ(日本)
リードギターが抜けたGoing Steadyは2003年に解散し、1996年からの7年間の活動を終えた。その後間もなく、このバンド、銀杏BOYZが結成された。脱退したリードギターの我孫子(あびこ)氏の代わりとしてチン中村を迎える形となった。銀杏BOYZとしての初となるアルバムは、二枚同時発売となった。「DOOR」(2005年)と「君と僕の第三次世界対戦的恋愛革命」(2005年)の二枚。2017年にリリースした「光の中に立っていてね」というアルバムも傑作で、特に「ぽあだむ」や「新訳 銀河鉄道の夜」が好きだ。尚、「新訳 銀河鉄道の夜」に関しては、2004年に発表された「DOOR」のアルバムに収録されて曲、「銀河鉄道の夜」のアップデート版である。そして、この2004年にリリースされた「銀河鉄道の夜」もGoing Steady時代にリリースした「さくらの唄」(2001年)というアルバムに収録されている「銀河鉄道の夜」のアップデート版である。つまり、この「銀河鉄道の夜」という曲は、2001年に発表されてから、2004年、そして2017年と、同じ曲でありながら、歌詞の変更であったり、演奏の変更であったりと、様々なアップデートを経ているのである。これぞ正に、「生きている曲」なのである。このバンドは「熱量」で溢れている。彼らが奏でる曲には嘘がなく(少なくとも個人的にはそう感じる)、胸に響くのである。尚、NOFXのFat Mikeは自らの曲である「Linoleum」(1994年発売のPunk In Drunblicのアルバムに収録されている曲)を2021年に発売したアルバム(Single Album)に「Linewleum」というタイトルで27年振りセルフカバーを行っており、「(曲を更新するという行為は)世界でも例を見ない」と言っていたが、個人的にはそれ(曲を更新するという行為)を既に先に行っていたのは銀杏BOYZであると感じている。