夏?
溶けないアイスクリームの体温、半透明な線香花火からはちょっと高いシャンプーの匂い、自分の愛が正しいと思ってる人達が怖いと泣いている小学校のプール、自由研究で酸化したダイヤモンド、信号が赤く点滅している深夜高速、棘のない薔薇からする朝顔の匂い、大量のスマホが水槽に不法投棄された偽物の新宿、ヨーヨーに閉じ込められた花火大会、水平線が向日葵で覆われている白夜。
無いけれど確実に存在する夏の記憶達。
寂しさだけが満ち欠けをする箱庭の中の夜。
永遠になれなかった真夏の夜の夢。
星で満ちた空っぽの水槽。
重力を失った部屋で揺蕩う君の名前を抱きしめた。微睡の中に溶けてゆく2人。