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短編小説 「ブタになったエルフ」


目を覚ますと、周りには見慣れない草むらが広がっていた。体が重く、立ち上がろうとすると四本の足が地面を踏みしめる。何かがおかしい。慌てて近くの池に駆け寄り、水面に映る自分の姿を見た。

 「これは……ブタだ!」

僕、アルフォはエルフのはずなのに、今や丸々としたブタの姿になっている。昨日までの記憶がぼんやりと蘇る。ポルカという可愛いブタの少女を食べてしまったこと。そして、その瞬間に体に奇妙な力が走ったのだ。

 「呪い?」

森の風が冷たく肌を撫で、木々の葉がざわめいている。遠くからは鳥たちのさえずりが聞こえ、太陽の光が木漏れ日となって地面を照らしている。

 「とにかく、誰かに助けを求めないと」

そう思って森の奥へ進むと、遠くからエルフたちの笑い声が聞こえてきた。懐かしい仲間たちだ。僕は急いで彼らの元へ向かった。しかし、姿を現した僕を見て、エルフたちは嘲笑した。

 「なんだ、こんなところにブタがいるぞ!」

 「太ってて美味しそうじゃないか?」

彼らの言葉に胸が締め付けられる。必死に声を出そうとするが、出てくるのはブーブーという鳴き声だけ。

 「違うんだ、僕はアルフォなんだ!」

心の中で叫ぶも、伝わらない。エルフたちは狩りの道具を手に取り、僕に近づいてくる。

 「捕まえて晩餐にしよう!」

恐怖に駆られた僕は、その場から全力で逃げ出した。森の中を駆け抜け、枝や茂みが体に当たる。息が切れそうになるが、振り返るとエルフたちが追ってきている。

 「待てー!」

足がもつれそうになりながらも、なんとか森を抜け出した。目の前には広大な草原が広がり、遠くには人間の村が見える。

 「人間なら話を聞いてくれるかもしれない」

希望を胸に村へ向かう。しかし、村に入るや否や、人々は驚いた表情で僕を指さした。

 「大きなブタがいるぞ!」

 「これはご馳走だ!」

今度は人間たちが網や縄を持って追いかけてくる。再び逃げ出す僕。太陽が西に傾き、空がオレンジ色に染まっていく。

 「どうしてこんなことに……」

疲れ果てて森の中に戻り、木陰に身を潜めた。風が静かに木々を揺らし、遠くではフクロウの鳴き声が響く。

その時、パサリと何かが落ちる音がした。そちらを見ると、一人のエルフが矢に射られて倒れていた。

 「誰か……助けてくれ……」

彼は苦しそうに呟いた。近づいてみると、彼は僕を馬鹿にしていたエルフの一人だった。

 「これは……」

迷いが生じた。しかし、このままでは彼は命を落としてしまう。

 「どうすればいいんだ?」

その時、体の奥底から衝動が湧き上がった。お腹が鳴り、口の中に唾が溜まる。

 「いや、ダメだ……でも……」

理性と本能の間で葛藤する。彼を食べれば、この呪いが解けるのではないか。そんな考えが頭をよぎる。意を決して、僕は彼に近づき、その命をいただくことにした。すると、体が熱くなり、眩い光に包まれた。光が収まると、僕は元のエルフの姿に戻っていた。

 「戻った……!」

喜びと罪悪感が入り混じる。自分が何をしてしまったのか。足元には彼の姿が消え、ただ静寂だけが残っていた。森の風が冷たく感じる。月が雲間から顔を出し、静かに地面を照らしている。

 「これで良かったのか?」

自問自答しながら、僕は森を歩き始めた。罪を背負いながらも、生きていかなければならない。遠くからは、エルフたちの楽しげな声が聞こえてくる。しかし、もう彼らの元には戻れない。

 「新しい道を探そう」

夜空に輝く星を見上げ、僕は決意した。過去の過ちを胸に刻み、これからは違う生き方をしようと。風が頬を撫で、どこからか希望の香りが漂ってくる。森の先には、まだ見ぬ世界が広がっている。

 「さあ、行こう」

足取りは軽くないが、一歩ずつ前へ進む。




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