短編小説 「わかめご飯おにぎりは最強なのだ」

勝浦の海岸線は、広々とした砂浜が赤い夕日に染まっている。夏の終わりのやわらかな赤い空が広がり、時折カモメたちが優雅に飛び交う。そして、高校生のヤシロはその美しい海岸沿いの防波堤に座っていた。彼の黒髪は、優しい潮風にそよぎながら、目の前の絶景を前に心地よさそうに鼻歌を歌っている。彼の鼻歌と波の音が心地よいハーモニーを奏でていた。

ヤシロがリュックを開けると、中からキラキラと太陽の光を反射する銀紙の包みを取り出した。彼の手には、一つの大きなおにぎりが握られている。それは、しっかりとした手のひらのサイズで、わかめがご飯がちらりと顔を出している。

おにぎりは、近所のおばあちゃんが経営する古びた和菓子屋で手に入れたもの。そのおにぎりには、勝浦の新鮮なわかめをたっぷりと使用した特製のもの。

ヤシロは一口大胆にかぶりつく。そして、一言「塩気を帯びた海風と共に、わかめの独特の風味が広がる。そして、もっちりとしたご飯の食感がそれを包み込んで、絶妙なハーモニーを奏でるのだ」

「これは…」彼の瞳が輝く。「こんなに美味しい、わかめご飯のおにぎりを世界遺産にしてもいいレベルなのだ！」と、彼は満面の笑みで叫んだ。

続けてヤシロは、夕日の中できらきらと輝く海を指差しながら、情熱的に語りだす。「このわかめ、本当にすごいのだ。口に入れるとコリっとしっかりとした食感で、噛めば噛むほど深い磯の香りが広がってくる。それとこの場所、見渡す限りの広い海と夕日、潮風の香りが、このおにぎりの風味を引き立てているような気がするのだ」

彼の目は遥か彼方のヨットに注がれ、思いにふけるようだった。少し波の音とカモメの鳴き声に耳を傾けた後、彼はゆっくりと言葉を続ける。「ここ最近、テストや友達との約束など、毎日が駆け足で過ぎていった。だけど、こうして自分だけの時間を持ち、美味しいと感じるものを食べながら、静かな海を眺める。こんな時間が、どれだけの幸せをもたらしてくれるか…本当にありがたいのだ」

夕日の赤い色が海面に広がり、遠くのヨットのシルエットが映えていた。その中、ヤシロはおにぎりをひとつ大切に味わいつつ、この時間の静寂と美味しさにかぶりつく。彼の頬がわずかに上がり、再び独り言をつぶやく。「やっぱり、自然の中で、シンプルな食べ物を味わうこと。これ以上の贅沢はないのだ」

空は、日が沈むにつれて赤から青紫へと変化し、彼の周りは潮の香りとともに微かな涼しさが漂い始める。しばらくの間、彼はただ、その刹那の美しさに魅入られながら静かに海を眺め続けた。

そして、この特別な一時を心に深く刻み、彼の足取りは少し重たくなりながらも、明日への期待を胸に帰路についた。

時間を割いてくれて、ありがとうございました。