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短編小説 「チクシュルーブ」

僕は、小さな惑星。父親から小惑星帯を追い出され、今はただ、宇宙の広大な虚空を孤独に漂っている。星々の間をすり抜けるたびに感じる冷たい静寂が、僕の心を一層締め付けた。怒りと悲しみが渦巻く中、僕の存在の理由を問い続けていた。

暗い宇宙の中で、自分がなぜこうなってしまったのか、答えを見つけることはできなかった。父親に認められたい一心で生きてきた僕。いつも一緒にいたいと思っていたが、その願いは叶わなかった。

「なんで僕を追い出したんだろう……」無限の闇に向かって問いかけても、ただの虚空が広がるばかり。周囲に輝く無数の星々は冷たく無情で、僕の存在など気にも留めていないように見えた。その輝きはあまりに遠く、手が届かない夢のようだった。

「いっそのこと、歴史に名を残してやる!」心の奥底で決意が芽生えた。宇宙の片隅で忘れ去られてしまうくらいなら、いっそ大きなことをやって、誰もが僕の名を知るようにしてやる。存在の証を刻むために、何か大きなことを成し遂げるんだ。

その時、僕の視界に青い星が見えた。地球。そこには、生命が満ち溢れているという話を聞いたことがある。僕はその星に向かって軌道を変えた。近づくにつれて、地球の青い光が僕を包み込むように感じられた。

「これが僕の運命かもしれない…」内心の決意が固まった瞬間だった。地球に衝突することで、僕は歴史に名を刻むことができる。そう思った時、ふと母親のことを思い出した。母親はいつも僕を温かく見守ってくれていた。彼女の優しい声が、今でも耳に残っている。

「ごめんね、母さん。でも僕は、もう誰にも振り回されたくないんだ。」そう呟いて、僕はさらに速度を上げた。大気圏に突入すると、僕の表面は燃え始めた。赤く、激しく燃える自分を感じながら、僕は地球の表面に向かって突き進んだ。

「これが僕の最後の瞬間だ。」そう思った時、僕の心は静かになった。激しい炎に包まれながらも、僕の内面は穏やかだった。これでいいんだ。誰も僕を忘れない。僕は地球の一部になる。

ついに衝突の瞬間が訪れた。大地が揺れ、巨大な爆発音が響き渡る。僕の存在は、地球上の生物を死滅させる力となった。あらゆる生命が消えていく中で、僕は自分の名を刻むことができたのだ。

「これで、僕は忘れられない存在になったんだ」そう思った瞬間、僕は完全に消え去った。しかし、その名は後に人間たちによって語り継がれた。彼らは僕のことを「チクシュルーブ」と呼んだ。




時間を割いてくれてありがとうございました。

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