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短編小説 「テレスコープの先」
夜が深まるにつれ、街の喧騒は遠くの記憶となり、静寂がユナミの住む家を優しく包んでいた。その家の屋上には、世界とは隔絶された小さな宇宙が広がっていた。
薄紫色のクッション、古びた木製の椅子、そしてそこには先代から受け継がれた光沢を放つ大きなテレスコープが鎮座していた。この秘密の場所は、星との約束を果たすユナミの聖域だった。
彼女の目を通して、遥か遠くの星々が今夜も語りかけてくる。ユナミは緑に輝く不思議な星を見つけて、興奮を抑えながらつぶやいた。
「あの星、あの緑色...。もしかして、緑色のカフェオレを飲む宇宙人たちの住む星なのだろうか。彼らは緑色のカップを手に、穏やかな時間を過ごしているのかもしれない」
夜のベールの下、ユナミの目には特別な星が映った。それは夜空で最も明るく輝くダイヤモンドのような星だった。「あの星は...」彼女の指先が微かに震えながら指し示す先には、光沢のある天体が浮かんでいた。
「まるで純粋なダイヤモンドの結晶で形成された世界。住民たちは、きっと朝には冷たくて清潔なダイヤの露で顔を洗い、昼下がりには輝く石でできたサンドイッチを楽しんでいるのだろう」
ユナミの心は、彼女の視線が届く星々それぞれに、情熱的な物語を紡ぎ出していた。彼女の目の前には、宇宙の果てを彷徨う巨大な宇宙鯨の姿が浮かび、銀河を舞台に軽やかなステップを刻む小さな妖精たちのダンスが繰り広げられていた。それは現実か夢か、彼女にとってはもう区別がつかないほどだった。
やがて、ユナミの目の前には輝く流れ星が現れた。「あれは...きっと、宇宙の郵便配達人が急ぎで手紙を届けているのかな」彼女は思わず願いごとをした。
「私もあんな星々の物語を、いつか本当に見てみたいな」
そして、夜が明けるまで、ユナミはその場所で夢を見続けた。
時間を割いてくれて、ありがとうございました。
月へ行きます。