短編小説 「指望遠鏡」
「お姉ちゃんいつも指と指を丸めて目に当ててるけどなにを見てるの?」ユカリが聞く。
「遠くが見えるよ、ものすごく遠い所が」カナメが答える。
「わたしにも見える?」ユカリが聞く。
「どうだろうね、わたしのは指望遠鏡になるけどユカリの指輪からは違うものが見えたりするんじゃないかな」カナメが答える。
ユカリは指と指を丸めて目に当てた。
「なにが見える?」カナメが聞く。
「隕石が見える。地球に向かってるみたい」ユカリが答える。
「それは大変だね、私たちにできる事はきっとないね」カナメが言う。
「どんどん近づいて来てるよどうしよう」ユカリが言う。
「なにもできないよ。指輪からは残酷な真実しか見えないから」カナメが言う。
「お姉ちゃんの指望遠鏡は遠くが見えるだけじゃないの?ほかにもなにか見えるの?」ユカリが言う。
「指輪に共通するのは残酷な真実が見えるってだけだよ。見たからってなにかを変えるのは困難だよ」カナメが答える。
「隕石が落ちてきたら地球が滅びちゃうよ」ユカリが言う。
「滅びてもいい星って事だよ、それが真実なんだよ」カナメが言う。
「そんな……」ユカリが言う。
「来世は地球以外の所で仲良く暮らしたいね」カナメが言う。
終わり。