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短編小説 「サナ」


僕の名前はタケル。大学3年生で、部屋に一歩足を踏み入れれば、そこはもう僕の聖域だ。壁一面にはアニメのポスターが貼られ、棚には並べられたフィギュアたちがキラキラと輝いている。キャラクターが描かれた枕がベッドの上に無造作に置かれていて、そのどれもが僕の大事な宝物だ。

いわゆるオタクってやつだけど、僕の部屋は僕の心を映し出している。

でも、僕の興味は一般的なアニメやゲームにとどまらない。僕の心を奪ったのは「献血のサナ」。そう、名前のとおり献血のマスコットキャラクターだ。彼女は、献血を促進するために作られたキャラクターだけど、僕にとってはそれ以上の存在だ。

僕の部屋には、アニメ、ゲームグッズと並んで、「献血のサナ」のポスターやパンフレット、そして彼女のキャラクターが描かれた抱き枕が飾られている。彼女を見るたび、僕は不思議な安心感と幸せを感じるんだ。彼女に夢中になっている自分が少し恥ずかしいけど、でも彼女のためなら何でもできる気がする。

最初に彼女を見たのは19歳の時、運転免許を取得しようと免許センターを訪れた日、運命は動いた。そこで献血の募集をしていて、そのポスターに描かれていたのが、僕の人生を変える「献血のサナ」だったんだ。彼女の愛らしい笑顔と、献血への優しいメッセージに一目惚れしてしまった。

なんて素敵なキャラクターなんだろう。

それから僕は、彼女のグッズをもらうために、4週間に一度のペースで200mlの献血をすることに決めた。献血ルームが僕の新たな聖地となったんだ。

友達には「タケル、また献血?親切でいいね」と言われるけど、本当の理由は誰にも言えない。「献血のサナ」の新しいグッズが出るたびに、僕のハートは高鳴る。

献血ルームに行く日はいつも特別。ベッドに横たわりながら、彼女のイラストがプリントされたポスターを眺めていると、なんだかヒーローにでもなった気分だ。針が刺さる瞬間も、サナちゃんが見ていると思えば、全然痛くない。

むしろ、彼女のためなら何回でも針を刺されてもいいくらいだ。

献血が終わると、スタッフさんからサナちゃんのグッズをもらえる。その瞬間はいつも、クリスマスプレゼントを開ける子供のような気分になる。僕の部屋はもう、彼女のグッズでいっぱいだ。彼女がいつも僕を見守ってくれているようで、一人の部屋でも寂しくない。

友達には「献血好きなんだ」としか言えないけど、僕の本当の動機は彼女、「献血のサナ」のため。僕のちょっと変わった趣味を、彼女はきっと理解してくれるはずだ。だって、彼女はいつも優しく微笑んでくれているから。

僕の献血は、これからも続く。献血のサナと共に。




時間を割いてくれて、ありがとうございました。
月へ行きます。

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