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短編小説 「勝負は残り200メートル


高校の帰り道、ぽつり、ぽつり、と雨が降ってきた。家までは、まだ距離がある。これ以上、強く降らなければいいけどな。強く降る前に走って帰ろう。


急いで走って帰る途中、後ろから足音と息を切らすような音が聞こえてきた。誰かが、僕を追ってきてるのか、音はどんどん近づいてくる。そして、突然背中を叩かれた。


「ねぇ、どっちが先に家に着くか競走ね」


叩いてきたのは、同級生のアカリだ。アカリは、僕の背中を叩いた後、家まで競走しようと言ってきた。競走なんてしたくない。僕は、足が遅いし、何より、アカリは駅伝の選手だ。勝てる訳ないし、負けたくないから競走なんてしない。


「嫌だ」


「ダメ。競走」


「じゃあ、負けて」


「私より速く走れば、負けてあげる」


「無理」


「じゃあ、私が勝ちだね」


走りながら、競走をするかしないかを話していたら、雨が強く降ってきた。僕らは急いで、近くにある神社で雨宿りをした。


「よかったね降ってきて。このまま競走してたら、アオイ負けてたね」


ヘロヘロになって座る僕を見下す様にアカリが言ってきた。いつも、何かと勝負を仕掛けてきては、勝負に負ける僕を見下すアカリ、今日はまだ、決着がついていないにも関わらず、早々に僕の負けを見込んで僕を見下す。


「ブラ、見えてるよ」


「嘘。今日は、シャツの下に体操服着てるから、ブラは絶対に見えません」


「チッ」


「負けがそんなに悔しいの?」


「まだ負けてない。家に先に着いた方が勝ちだろ。ここは神社」


「そうだね。じゃあ、負けが濃厚で悔しいの?」


「勝負は振り出しだろ。神社からリスタートなんだから。残り、二百メートルで俺が勝つよ」


「ふ〜ん。まぁ、しばらく雨は止みそうにないから、止んでからね」


家までの距離は二百メートル。アカリには勝つと言ったが、絶対に勝てない。僕の足は、久しぶりに走って足が、ガクガクだ。それに、どんな距離だろうと、アカリとの競走は絶対に勝てない。


「雨、止まないね」


「じゃあ、俺、帰るね!リスタート!」


「あっずるい!卑怯者〜!雨、まだ降ってるじゃん!」


アカリに勝つには、奇襲をかけるしかない。残り、二百メートル、この勝負は僕が勝つ!



終わり。



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