短編小説 「夏の終わりの思い出」

鵜原海水浴場の前に、果てしなく広がる青い海が、太陽の光を受けてキラキラと輝いている。

夏の盛り上がりが過ぎ、今は太陽が地平線に近づく中、波の音がゆっくりと砂浜に響き渡っていた。海の色はやや深くなり、夕暮れの美しいオレンジ色が空と海を染めていた。その中で、タイキとマナミの二人の姿が浮かび上がる。

マナミの白いワンピースが風になびきながら、タイキのカジュアルなTシャツとショートパンツが波打ち際の水しぶきで濡れている。

「おい、マナミ。また足に砂が付いたらどうするんだよ！」タイキは太陽が反射する海の上で、彼女の悪戯に顔を真っ赤にして叫んだ。

マナミは夕陽を背に、髪を揺らしながら笑い、タイキの方を振り返って言った。

「だって、足元をくすぐるのが楽しいんだもん」

タイキのサンダルが砂に埋もれるようにしながら、彼はくすぐったく体をくねらせてマナミを追いかけた。
二人は砂浜の微細な砂が足に感じられる中、息を切らして駆け回り、最後は波打ち際で、足元の泡立つ波とともに、楽しそうに笑い合った。

夕暮れの海は、ゆったりとした波が静かに打ち寄せる。空にはもう紫やピンクの色が広がり、夕陽の残るオレンジがその上を照らしている。そんな景色の中、マナミの顔つきが変わった。

「でも、本当は知ってるんだ」彼女の目は夕日の反射でキラキラと光って、少し真面目そうな、そして深い表情になった。

タイキは足元に打ち寄せる涼しい波を感じながら、不安そうに彼女を見た。

「え？何を？」

マナミは深呼吸をして、遠くの水平線を指差した。「夏休み中、タイキが毎日この海で泳いでたこと。そして、私もあの岩陰からこっそりと毎日見ていたことを…」

砂浜の微細な砂粒が風で飛び跳ねる中、タイキは驚いた顔をした。

「えっ！マジで？それなら、なんで今まで黙ってたん！」

彼女は水しぶきが輝く中、にっこりと微笑み、ゆっくりと答えた。

「それは…休みの賑わいが落ち着いて、静かなこの瞬間を2人で楽しむためだよ」

タイキは、波間で輝く夕陽とともに、マナミの言葉に少し頬を赤らめ、彼の胸の中には、ほのかな火照りがじわじわと広がっていた。

砂浜は、だんだんと夕暮れの柔らかいオレンジ色に染まり始めていた。太陽はもう海の水平線に接近し、その光の輝きがゆっくりと海面に反射してキラキラと輝いていた。

「そういうところが、マナミらしいな」タイキは目を細めて夕日を眺めながら、少し呆れたような口調で言ったが、その目は暖かくなっていた。
波の音がゆっくりと耳に入ってきて、心地よい潮風が二人の頬を撫でる中、マナミとタイキは無言で手をつなぎ、その特別な瞬間を共有した。

突然、マナミがこちらを見て、目尻を下げて微笑んだ。

「さぁ、今度はどこから見てようかな？」

タイキは彼女の予期しない言葉に目を見開いて見せた。

「えっ、まだ続くの？」

彼の声に驚きの色が滲んでいたが、二人の夏の思い出が、また一つ増えたのだった。

時間を割いてくれて、ありがとうございました。