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短編小説 「白線の外はマグマ」



淡く広がる青空の下、風が木々を揺らす音を遠くで聞きながら、私は目を閉じて深呼吸をした。鳥のさえずりや、遠くの子供たちの笑声が聞こえてきた。足元には太陽の光を浴びて明るく輝く白線。それが私の挑戦のスタートラインだった。目を細めると、遠くに小さく古びた木製の看板が見える。それは、私の大好きな駄菓子屋の看板だ。

その駄菓子屋までの道のりは、一見単純だが、ある重要なルールがあった。「白線の外はマグマ」というもの。周囲は幻想的なオレンジと赤が溶岩のように広がっていると想像し、足元が熱くなるような気さえしていた。

子供の頃、私たちの声は響き渡り、このマグマの上での冒険は日常の中での一大イベントだった。本物のマグマのような熱さや危険はないものの、私たちの想像力はそれをリアルに再現していた。熱い空気、燃えるような赤、そして白線だけが私たちを救う道としてそこに存在していた。

「ルル、白線歩きで今日も勝負だ!」友達たちの声が遠い日々を思い出す。夏の日差しの中、彼らとの熱い戦い、そして時には助け合いながらの冒険。しかし、この日は異なる風景が広がっていた。自分の心の鼓動だけが聞こえる中、私は自分との対決を迎えていた。

白線の上を歩くことの難しさは、ただまっすぐ歩くだけではない。道路を横切る際の信号の変わる瞬間、そのわずかな間に進まなければならないプレッシャー。そして、その短い時間でのマグマ上の冒険が始まる。

風が通り過ぎるたび、私の髪は乱れ、薄手のスカートが揺れる。その度にバランスを崩しかけ、汗がいくつも落ちる。しかし、熱く燃えるオレンジの幻想が足元に拡がり、危険を感じながらも、私はそのスリルを楽しんでいた。

車の音、子供たちの笑い声、そして私の重い呼吸。それら全てがこの挑戦を特別なものにしていた。そして、そのすぐ下に広がる、熱く燃えるマグマの海が私を待ち受けている。

太陽の光が道路に反射してきらきらと輝く中、私は足元に細かな小石を発見した。その一粒一粒がきらめく石は、足を躓かせる危険な罠ともなる可能性があった。

私の足の裏に感じる小石は、まるでマグマが固まってできた火山石のようだ。一歩踏み出すごとに、それを避けながら、足元の白線を守るように進んだ。

そして、道中、予期せぬ亀裂が現れる。長くて深いその亀裂は、太古のマグマが地表に吹き出した後の名残のよう。蒸気を上げるその亀裂を見て、一瞬だけ背筋が凍るような恐怖を感じた。

遠くのほうで、駄菓子屋の色とりどりの旗がひらひらと舞っている。私の大好きなラムネの瓶や、焼きたてのタイ焼きの甘い香りが風に乗って私の鼻をくすぐる。しかし、目的地への誘惑に魅かれるあまり、この危険な道を急ぐわけにはいかない。最後の一歩まで、緊張感を保ちながら進む決意を新たにした。

そして、やっとの思いで駄菓子屋の入口に到着すると、私は深く安堵の息をついた。目の前には古びた木の扉と、その周りを取り囲むガラス窓には色とりどりの駄菓子が並んでいた。足元の白線から一歩も外れず、無事にこの魅力的な場所にたどり着くことができた。

「やった!」と私の心は胸を弾む喜びで満ち溢れていた。その喜びを胸に、古びた扉を開けて店内に足を踏み入れると、昔懐かしい甘い香りと、木の床の軋む音が私を迎えてくれた。色鮮やかなお菓子たちが所狭しと並べられており、それらを目の前にして、私は更なる達成感に浸ることができた。

この日の冒険は一見小さなものかもしれないが、私にとっては格別な成果となった。大人の日常の中に隠れた子供の頃の純粋な楽しさを見つけ出し、それを堪能する。

それが私の日常の中での特別な冒険だった。




時間を割いてくれて、ありがとうございました。

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