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短編小説 「酒場のエルフ」


深い森の奥にある小さな酒場「星降る角」夜になると、さまざまな種族が集まり、賑やかな笑い声が響く。その隅の牛の丸テーブルで、エルフのアルフォが頬杖をつきながら、ぼんやりとグラスを見つめていた。

 「またアルフォが飲んでるよ」と、小鬼たちがひそひそ話す。酒場の主人、悪魔のクルーはカウンターの奥からその様子を横目で見て、尻尾をゆらりと揺らした。「まったく、懲りないやつだ」

カウンターには妖精やドワーフ、魔法使いたちが集まり、アルフォが次に何杯飲むのか賭けをしている。

 「次は何杯目だ?」

 「確か、もう11杯は飲んでるはず」

 「じゃあ、俺は15杯に賭ける!」

アルフォはゆっくりと手を挙げて、クルーに声をかけた。「クルー、もう一杯くれないか」

 「12杯目だぞ、大丈夫か?」クルーは黒い翼を広げながら、新しいグラスに琥珀色の酒を注いだ。

 「心配ないさ。エルフの誇りにかけて、まだまだ飲めるよ」

アルフォはグラスを受け取り、一口飲むと満足げに微笑んだ。外では星が輝き、夜風が静かに木々を揺らしている。

一方、空の高みから神様がその光景を見下ろしていた。長いひげを撫でながら、「今日も賑やかだなあ」と呟く。

酒場の熱気は増すばかり。客たちはアルフォの健闘に歓声を上げ、賭けに熱中している。

 「さあ、次は何杯いくかな?」

 「彼なら20杯はいけるんじゃないか?」

アルフォは少し赤くなった頬を手で冷ましながら、再びグラスを空にした。「クルー、次も頼むよ」

 「おいおい、本当に大丈夫か?」クルーは呆れつつも、新たな一杯を用意する。

その時、外から不思議な光が差し込んだ。

誰かが窓の外を指差して叫ぶ。「空が光ってる!」皆が外を見ると、夜空に大きな流れ星が現れていた。しかし、その光はどんどん大きくなり、こちらに向かってきているようだ。

 「なんだあれは!?」

酒場の中は騒然となった。クルーは翼をばたつかせて、「みんな、外へ出ろ!」と叫ぶ。

しかし、アルフォはまっすぐ立ち上がれない。

「もう一杯……あと一杯だけ……」

流れ星は猛烈なスピードで近づき、やがてそれが隕石であることに誰もが気づいた。

 「逃げろー!」

しかし、時すでに遅し。巨大な隕石が酒場に直撃し、眩い光とともに大きな爆音が響いた。

しばらくして、煙と埃が晴れると、そこには黒焦げになったアルフォやクルー、そして他の客たちがぽつんと立っていた。皆、真っ黒な姿で目をぱちくりとさせている。

 「なんてこった……」クルーが尻尾で顔の煤を払う。

アルフォは頭から立ち上る煙に気づき、「あれ?僕、焦げてる?」と不思議そうに呟いた。

すると、空から神様の声が降りてきた。「おお、すまない!隕石の軌道を間違えてしまったようだ。大丈夫だったかい?」

クルーは空を見上げて、「冗談じゃないよ、店がめちゃくちゃだ!」と文句を言う。

神様は申し訳なさそうに、「後でちゃんと弁償するから、許しておくれ」と答えた。

アルフォは苦笑いしながら、「まあ、これもいい思い出かな」と肩をすくめる。

客たちはしばらく沈黙していたが、やがて一人が笑い出し、それにつられて皆が大笑いした。

 「なんて日だ!」

 「賭けはどうなるんだ?」

 「隕石が降ってくるに賭けた奴はいないか?」

クルーはため息をつきつつも、「仕方ない、今日はこれでお開きだ。また明日、新しい店で待ってるよ」と宣言した。

アルフォは立ち上がり、ふらつきながらも笑顔を見せた。「じゃあ、明日は13杯目から」

皆が笑い合い、夜の森に楽しげな声が響き渡る。

神様はほっと胸を撫で下ろし、「やれやれ、彼らは本当にたくましいなあ」と微笑んだ。

こうして、酒場のエルフたちの賑やかな一日は幕を閉じた。




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