SF短編小説 「BEAST NOON」
太陽が上らない世界。僕ら昼行性の生き物達は日光を浴びたい。
夜行性の生き物達にとってはきっと毎日が昼なのだろう。
自己紹介です。僕は柴犬のバルペス。理由があって警官に追われてます。
薄暗い町の中、一匹の犬が警官に追われてる。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ。走らないと、捕まる訳にはいかない」
「ピピー」
「待て〜、止まれ、止まるんだ」
「うわっなに?」
「またあいつか」
「お〜い、なにしたの〜?」
「取られたもの取り返しに〜」
「夜なのになんであんな元気なんだ」
「若いからだろ」
町の住人たちの前を走り去るバルペスと警官。
「ガッ」何かが屋根から屋根へ飛んだ。
「あれ見て」
「あっ、どうしてあの方が町に?」
何者かがバルペスと警官を追う。
「おい、白犬。何してるんだ、何故警官に追われてる?」
「ハァ、ハァ、アンシアさん。どうしてここに?」
「俺はいい。お前が追われてる理由を聞いてるんだ。」
「これ、ご飯。ゾウ達のご飯。あいつらゾウ達のご飯を横取りしたんだ、だから取り返してきた。」
「横取りされたからって、お前らが警官から取り返すは危険だ。とりあえず俺が説得するから先に行け。」
「ありがとうアンシアさん」
「ガッ」雪豹のアンシアが屋根から降りた。
「アンシア邪魔をするな。妨害行為で逮捕するぞ」警官のアライグマが言った。
「お前らがゾウ達の飯を横取りしたって言ってたが、逮捕されるのはお前らじゃないのか」
「図体がデカいから一日くらい飯を抜いたって死にはしない、別に構わないだろ。退くんだアンシア」
「断る」アンシアは鋭い牙を見せて警官を威嚇した。
「チッ。もういい。アンシア、昼行性の奴らに肩入れするのも大概にしとけよ」
「お前らも昼行性の生き物達に平等に接しろ」
「平等なんかない。次はお前だろうと逮捕する、覚えとけよ」
「ガァグルル」アンシアは唸り声を出した。
場所は変わってゾウ達の家。
「バルペ〜ス無事か〜」一頭のゾウが声を出す。
「ホーン、取り返してきたよ〜」バルペスは警官から取り返えしたゾウ達のご飯を高々に掲げながら走ってきた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ。ハイこれご飯受け取って」
「ありがとう。でも大丈夫なの?警官から取り返すなんて」
「あぁ、大丈夫だよ。途中でアンシアさんが助けてくれたんだ。だから大丈夫」
「それはよかったね。バルペス一人じゃ、きっと警官に殴られて帰ってくるから」
「そんな事ないよ、失礼だな。俺はもう十八だ立派な柴犬だ、アライグマなんかすぐに追いはられる」
「そんな事はない」後ろから聞こえてきた。
「アンシアさん。さっきはありがとう」
「白犬、奴だって本気を出せばお前くらい簡単に捕まえる事はできた。そうしなかったのはお前の父親が技術者だからだ」
「夜行性の奴でも技術者の息子なら昼行性の俺は捕まえないのか」
「そうだ。親父さんが国に貢献したからお前は無事なんだ。わかったら、大人しくしてろ。立派な柴犬だろ」
「親父が国に貢献したから、俺たちが太陽を見られないんじゃないか」
「バルペス、親父さんがいなければもっと状況は悪くなっていた。お前らがこうして暮らせてるのは全て親父さんのおかげだ。わかったな」
「はい」
「ピカー」
突然の眩い光
「なに?今、光が」ホーンが言った。
「ドガァーーン」
光の後に大きな爆発音がした。
「なに?今の音」
「シールド管理局の方からだ。なにがあったか見てくる」アンシアは管理局の方へ向かった。
「あっ、待ってよ俺も行くよ」
「えっ行かない方がいいよ。危ないよ」ホーンが言った言葉はバルペスには届かなかった。
続く。