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短編小説 「キス・ミー」


海面から浮かんでくる朝日を見て、安らいだことはあるだろうか。また、海面へと沈んでいく夕日を見て、苦しんだことはあるだろうか。どちらにしろ、どちらの太陽も見たのはだいぶ昔のことなわけだし、それに、太陽を見てなにかを感じるなんて自分にはないのだから。冷たいわけではない。それほど、打ちひしがれる思いをしたことがないのだ。たいした経験も苦労も努力もしたことないのだ。

ところで、なにも知らずに、キスをしてもらうのはものすごく難しいことだ。もちろん異性からだ。キスをしてもらうよりも、キスの、異性の味をわかりやすく説明するほうが何倍も簡単だ。が、それは例えだ。キスの味を誰もが納得するような説明はできない。

異性にキスをしてもらうには、緊張せず軽く「ねえ、キスして」と、言えば済む。緊張している状態でそう言うと声が震える。それに緊張が伝わって相手も緊張してしまう。もちろんその場の状況を考慮しなければならない。盛り上がってる飲み会で伝えれば、誰かしらキスしてくれる。異性から。もちろん同性からも。


すこし、話を変えてキスの味の話でもしよう。キスの味を説明するとしたらそれは“好意”だ。塩を舐めたら、「しょっぱい」砂糖を舐めたら、「甘い」と、同じようにキスをしたら、“好意”ほかの言い方をするのなら“好き”だ。

砂糖を舐めた時に感じるものが甘味として言語で表現するように、キスの時に感じたものを“好意”として言語で表現するのが一番だろう。もちろん、キスのみで感じるのがキスの味だ。甘味は砂糖からでしか感じないのと同じだ。キシリトールなどの甘味料もあるが、基本は砂糖から感じるのが甘味なのだ。

キスをしてもらうためには、別に相手に本気で好きになってもらわなくたっていい。ちょっと、お互い気分良くなればいいだけだ。正直に軽く言えばいいだけだ。二人っきりの時も同じだ。

「ねえ、キスして」と、そう言えばいいだけだ。いきなり、唇にする人もいれば、ほっぺにする人もいる。人それぞれだ。異性のキスも、同姓のキスも悪くはない。恋愛の好意とは、またすこし違うが、好意であることは確かだ。

互いに同意のもとの、キスはとてもいい。朝起きて朝日を浴びた時の気分になる。朝日を見たところでなんとも思わない。ただ、朝起きていちばんに朝日を浴びるのはとてもいい。キスのように。




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テヘペロ。

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