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短編小説 「かき氷はロックだぜ」


シロップをかけずにかき氷を食べた時に塩味を感じたことはあるか。

去年の夏、その日は昼間の熱気が深夜まで持ち越されたとても暑い日だった。仕事の帰りにコンビニに立ち寄ってロック氷を買った。熱気がこもった家に帰宅してすぐにかき氷機に氷をぶち込んでハンドルをクルクル回した。削られた氷が出てきた時わずかに感じる冷気が心地よかった。

ふと、とあることが頭をよぎった。シロップはあるのだろうか。シロップを買った記憶がない。一昨日、かき氷機を家電屋のセールで買って今日初めて使った。セールのかき氷機の横にレモンシロップがあったがブルーハワイをかけたかったからスルーした。その日も次の日もそして今日もシロップを買ってない。

その日、夏が終わった。シロップがなければ、ただ氷を削っただけ。器に盛られたかき氷がみるみる溶けていく。私の気持ちはどんどん冷えて、体はカチコチに固まった。手元に視線を落とすと小さな水たまりができていた。そこに映る私の顔は確かに歪んでいた。

スプーンすらない。持ってくるのを忘れた。いまさら、取りに行くのもバカバカしい。その真っ白なかき氷を手ですくって食べた。味なんてしないと思った。だがそれは間違いだった。海水ってほどではないが、すこし塩味を感じた。そうだな、額から滴り落ちてきた汗を口にした時に感じるくらいの塩味だ。だがまあ、滴り落ちるほどの汗はかいていないのに塩味を感じるとは夏のロック氷は素晴らしい。

まさにロックだ。



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季節はずれでごめんなさい。

テヘペロ。

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