短編小説 「夢の中のウサギ」
平日の昼間、部屋は静かで、日差しが窓からそっと差し込んでいた。仕事休みの私は、パジャマ姿のままベッドに横たわっていた。スマホを手にして、無意識のうちに画面をスワイプしている。
時折聞こえる外の世界のざわめきや、部屋の時計の静かな秒針の音。私の指は、スマホの画面上で軽やかに動き、通知をチェックしたり、友人からのメッセージに目を通したりしている。
ベッドに沈み込んだ身体はリラックスしており、頭は枕に心地よく預けられていた。日常から解放されたこの時間は、私にとって貴重なリフレッシュの瞬間だった。部屋の中には私の穏やかな呼吸と、スマホを操作する指の微かな音が響いている。
尻をボリボリ掻きながら、私はふと小腹の空きを感じ、「お腹すいた……」と小さく呟いた。スマホでフードデリバリーサイトを開き、色々なお店のメニューを眺める。美味しそうな料理の写真が次々と画面に現れるが、値段と手数料を見るたびにため息が漏れた。
「高い……」私は再び呟いた。
結局、フードデリバリーの注文を諦め、スマホの画面を閉じる。しばらくベッドに横たわったまま、天井を見つめていたが、やがてまどろみが私を包み込んだ。重いまぶたがゆっくりと閉じられ、私はそのまま静かに夢へと落ちていった。
夢の中で、私は不思議な光景に遭遇した。グレーの毛を持つ小さなベレー帽を被ったウサギ一羽と、一緒にテーブルを囲んでいた。テーブルの上には、うさぎ肉のステーキが並んでいる。
そのウサギは、人間のようにナイフとフォークを器用に使いながら肉を食べていた。その様子はあまりにも異様で、私はただただその光景を不思議に思いながら見つめていた。ウサギが自らの肉を食べるという奇妙な現実に、混乱と好奇心が入り混じった。
そんなウサギを見ながら、私も静かにステーキを口に運んだ。夢の中とはいえ、肉は驚くほどリアルで、味わい深かった。ウサギは何も話さず、ただ黙々と食事を続けていた。私はその不思議な共食いの夢に、どこか現実離れした感覚を覚えながら、ステーキを食べ続けた。
すると、ウサギが口を開いて、驚くべきことを言った。
「ところで人間、なにゆえに私の世界にいるのだ?」彼は私をじっと見つめながら話し、その視線は鋭く、疑問に満ちていた。
私はその質問に答えようとしたが、言葉が見つからず、口ごもってしまった。その瞬間、急に現実に引き戻されるように目を覚ました。ベッドに横たわったまま、私は手元のスマホで時間を確認した。
時刻は17時38分を指していた。
私は深く息を吸い込み、夢の不思議な光景から完全に意識を現実に戻した。部屋はまだ静かで、夕方の落ち着いた雰囲気が漂っていた。
ウサギとの奇妙な夢のことを思い出しながら、私はベッドからゆっくりと起き上がった。
時間を割いてくれて、ありがとうございました。
月へ行きます。
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