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短編小説 「学校帰りのアメリカンドッグは最強なんだから」
「あーようやく、あの瞬間が来る。今日の授業は特に長く感じた。でも、今からが私の一日で最も楽しみな時間なんだ」
私の名前はユミナ。高校2年生で、三度の飯よりも好きなのが、コンビニで売ってるアメリカンドッグの最後のカリカリ部分。
「さて、どこのコンビニに行こう。でも決まってるよね。7の店のアメリカンドッグはそのカリカリ感が最高。もう、考えるまでもない」
コンビニのドアを開けると、冷房の効いた空気が頬を撫でる。目的のレジに向かい、ショーケースの中にピラミッドのように積まれたアメリカンドッグを確認。
そして、レジで一言。
「アメリカンドッグ1つください」
そして、もう一言。
「ケチャップはいらないです」
会計を済ませて、外のベンチに腰掛ける。シャリシャリと音を立てて包装紙開くと、こんがりきつね色のアメリカンドッグが姿を現す。
だけど、これはあくまで前菜。私が真に愛しているのは、この後に続くカリカリ部分なんだ。
包装を完全に剥がして、アメリカンドッグを持ち上げる。最初の一口を噛み切ると、サクサクのパンが口の中で広がり、安っぽいソーセージが際立つ。しかし、それはどうでもいい。私が狙っているのは、この後に待っている、最後のカリカリ部分だ。
「あと少し、あと少しで、もうすぐだ。カリカリ部分にたどり着く瞬間が来る!」
そして、ついにその時がやってくる。最後のカリカリ部分に歯が触れると、一瞬の静寂の後、口の中でカリッと食感が花開く。この独特なカリカリとしたリズム、これが私がアメリカンドッグを選び続ける理由なんだ。
「はぁ、やっぱりこの最後のカリカリ部分が最高。これのために生きてるって言っても過言じゃない」
食べ終わった後、私はベンチにもたれかかる。コンビニのドアが開くたびにアメリカンドッグのほんのり甘い香りが鼻をくすぐる。
「さて、帰ろうかな。でも、明日もカリカリにまた出会える」
その想いを胸に、私はスキップしながらコンビニを後にした。それはまるで心の中が足元にも伝わったかのような、軽やかなスキップだった。アスファルトの上で足が弾む度に、ちょっとした風でスカートが、ひらり、ひらり。そして、髪が微かに宙に舞う。
「家に帰ったら、まずは散らかった部屋の中で今日の宿題を確認して、それから早めに布団に入ろう。でもその前に、今日のカリカリ部分の感動を、日記帳にしっかりと記しておこう」
そして明日も、待っていてくれるであろう、そのカリカリ部分があることを知って。
「ああ、明日もきっといい日になる」
時間を割いてくれて、ありがとうございました。