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買ってきた本5
会社の休憩時間に一寸食事をしてから、馴染みの書店にぶらりと立ち寄りました。読みさしの本が増えてきているので買うつもりはなかったのですが、つい出来心で新刊本を入手してしまいました。
風間賢二(2022)『怪異猟奇ミステリー全史』新潮選書です。1月25日に発行されたばかりの新刊ほやほやです。まだ本当に冒頭の部分しか読んでいませんが、「ゴシック」の概念から説き起こしています。目次を見るとゴシックとはなにか、から始まって、18世紀イギリスのゴシック文学、次いでポー、ドイル、吸血鬼(ブラム・ストーカーでしょうか)、日本にこうした概念が輸入されて、谷崎潤一郎、佐藤春夫、芥川龍之介と進み、さらには最近私が愛読している江戸川乱歩や夢野久作、おしまいには綾辻幸人や京極夏彦など今日の作家にまで及ぶようで、いまから読むのが楽しみです。
ちなみに探偵小説は英語では Detective Story と表記されます。フランス語では Roman Policier (警察小説)。そして Detect の本来の語義は、「覆いをかけて保護する」を意味する Protect の逆で、「覆いをとって隠れていたおのを見つける」ということ。それに関しては興味深い逸話があります。
悪魔は屋根をはがして、そこの住人がひそかに行っている悪徳を探し出して地獄に連れていくというのです。かつて探偵が忌み嫌われていたのは、プライバシーを覗き見(詮索)する悪魔と等しい輩と思われていたからです。ある意味、江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』は文字通りの悪魔 = 密かに覗き見る人 = 探偵を語った秀作でしょう。(pp.3-4)
不勉強なもので「逸話」の典拠は、私には直ちにはわかりかねますが(どなたかご存じの方がいらしたらご教示ください)、悪魔と探偵(Detective)とを連絡する回路は私の脳内になかったので、この時点で既に興味深いです。
「お天道さまが見ている」とか、「天の父はごらんになっている」とかいうことばもあり、<悪魔>とは表裏一体になっている神聖なる存在もまた、この筋道にしたがえば、<探偵>にほかならないのではないか。
これまでの私の理解では、探偵とは手の込んだ事件(多くは殺人事件)のトリックを暴き立て、真犯人を白日のもとに曝すヒーローのことでした。しかし、引用した話の筋にしたがえば、探偵は受肉した神ないし悪魔だ、というふうにも云えそうです。これは私の理解する「探偵小説」の概念をずいぶん拡張しそうだ、と愚考しました。
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