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小説とか教科書に出てくる食べ物って文字だけなのになんであんなに美味しそうなの?

今思えば昔から本はわりと読む方で、読書が好きになったきっかけは小学生の頃あった「図書室でただ本を読むだけ」の授業でした。

自宅に本がない家庭で育ったせいか、小学生の頃にR.L.スティーヴンソンの『宝島』を読み通したとき、読書ってこんなに楽しいものなのかと驚いたのを今でも覚えています。

でも・・・それよりももっと鮮明に覚えているのが、作中に出てきた食べ物のこと。

『宝島』の内容そのものや登場人物の名前はほぼ覚えていませんが、強烈に頭に残っているのが主人公や海賊達の食事シーン。

懐かしいなぁ~と思いながらネットを調べてみると、青空文庫のHPで全部無料で読めるようになっていたので該当部分を一部引用します。

ちょうどその時、一人の男が焚火のところから朝飯の支度が出来たぞと私たちを呼んだ。それで、私たちはやがて砂地のここかしこに坐って堅パンとフライにした塩漬肉とを食べ始めた。彼等は牛を一頭丸焼するに適当なくらいの火を焚いてあった。そしてそれが今非常にかっかと盛んに燃えているので、風上からようやくその火に近づけるだけで、その方からでも用心をしなければ近づけなかった。それと同じ浪費的な気持で、彼等は食べ切れる三倍もの肉を料理したようであった。そして一人の奴は、訳もなくげらげら笑いながら、残った分を焚火の中へ投げ込んだ。

彼は、口一杯に熱い塩漬豚肉を頬張りながら、こんな風にしゃべり続けた。こうして彼は皆の希望と信頼とを回復した。同時に自分の希望と自信とをも取戻したのだろうと思う。

『宝島』 スティーブンソン Stevenson Robert Louis 佐々木直次郎訳


挿絵があるわけでもなく、食べ物についての詳細な外観、食感や味の描写があるわけでもない、わりとあっさりとした書き方。

なのになぜかお腹が空いてくるような、(実際はそんなに美味しくないであろう)熱い塩漬豚肉を頬張って食べてみたいような気持ちになるんですよね。


『ローワンと魔法の地図』という児童文学書を初めて読んだときも、ストーリーの面白さを感じると同時に、チーズという単語が頻繁に出てくるので、無性に普段好きでもないチーズが食べたくなったのを覚えています。(というかストーリーは全く覚えていない)


ジブリ映画を見たときに誰もが感じるであろう「あの食べ物美味しそう!」という感覚。

ハウルと動く城に出てきそうなベーコンエッグ



私は映像作品で感じるより、どちらかと言えばそれを文章で感じやすい側の人間みたいです。(わかる人います?)


他に特に印象が残っているのは小学生の低学年の頃だったか、国語の教科書に掲載されていた「ねずみのつくったあさごはん」という話。

町の歯医者さんのもとに一匹のねずみのおかあさんが虫歯の治療にやってくるところから話がはじまり、治療のお礼にねずみのおかあさんが歯医者さんに朝ごはんをごちそうする、というお話。

そこでの朝ごはんの献立。

ふっくりと炊きたてのご飯に、山うどの味噌汁。厚焼きの玉子に、菜の花のおひたし。つくしのごまあえに、たけのこの煮付け。そして最後に、さくらんぼが三つ。

ねずみのつくったあさごはん

このふっくりと炊きたてのご飯、確か竹を切った器に入ってるんですよね。他の献立も竹の葉っぱとか竹の器に乗っていた記憶があります。教科書には挿絵が載っていました。

この話も芸能人が饒舌に語る食レポのような詳細な味の描写とか特にないんですが、(歯医者さんが急に「この菜の花全然臭みがないですねー!」とか言ってたら笑ってしまうが)もうとにかく美味しそうで仕方ないんです。

正直このとおりの献立が出てきたとて喜ぶ30代男性はそんなにはいないと思いますが、文章で読むと今でもテンション上がっちゃいますね。


あとは確か小学6年生になったころ、国語の教科書で出てきた『赤い実はじけた』という話。

ストーリーを一文でまとめてしまうと、主人公の小学6年生の女の子が親に刺し身のお使いを頼まれ、苦手なクラスメイトの哲夫がいる魚屋に買い物に行き、店番をしていた哲夫と話しているうちに胸の中でパチンと赤い実がはじけてしまう、という初恋の話。

大人になった今考えるとものすごくほっこりしてしまうストーリーですが、当時の私は授業そっちのけでとある部分だけをむさぼるように繰り返し読んでいました。

「今の季節、やっぱりさしみはタイだね。マグロも新鮮だよ。」

「経木で包むのも、このへんじゃあ、うちの店くらいだよ。今はみんなスーパーだろ。魚をパックするなんて、かわいそうでよ。」

「アジのたたき、おまけな。食べてくれよ。」

哲夫はじまんそうに、アジのたたきも包んでくれた。

赤い実はじけた

小学生だった当時、淡い初恋の話そのものより、この「アジのたたき」に全意識を持っていかれた記憶があります。

一度も食したことのないアジのたたきを想像し、授業中に猛烈にお腹が減ったのを今でも思い出します。赤い実はじけたのおかげか、今ではアジは私が好きな刺身ランキング2位です。(1位はサーモン)




ほかにも思い出の小説や教科書の話などたくさんありますが、全部は書ききれないのでこの辺で終わります。



最近は哲学以外の記事にも色々チャレンジしていますが、単純に楽しいですね。ここ最近予定が詰まっていてあまり更新できてませんでしたが、自分のペースで継続したいと思います。スキやフォローやコメントをしてくださる皆様、いつもありがとうございます。本当に励みになっています。今後ともよろしくお願いします。

おわり

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