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「チームでつくるふりかえり習慣」の、その後。
以前のnoteで、「ふりかえりの習慣化を目的に、チームでやっている日々の終礼で、Stockrを使ったふりかえりを始めた」ことをご紹介しました。
記事のなかで詳しく説明していますが、終礼に取り入れたのは、習慣を身につける方法の一部「はっきりさせる」「易しくする」といったテクニックの応用です。
もともと毎日行っていた終礼に、新しいルーチンとして組み込むことで、実施することを「易しく」しました。
また「終礼の時間の中で個々でふりかえりを行い、Stockrに気づきをストックし、Slackのチャットにコピペする」と運用方法を決めてやり方を「はっきり」させました。
このように取り入れたことはハード面(仕組み)だけでなく、ソフト面(コミュニケーション)にもポジティブな効果を当初から感じることができていました。
気づきのシェアを始めたことで、終礼の質がグッと上がったように思います。
(中略)それぞれのシェアに、お互いの承認やフィードバックを重ねることで、結果としてチームメンバーの自己開示のレベルも高まり、信頼関係が強まっているように感じています。
でも・・・、新しい社内制度って大体どんなものでも最初のうちは良い効果を感じられると思うのです。
長い目で見ると、実施のハードルが適切ではなかったり、意義が浸透しきっていないと、時間経過とともに「いつも間にかやらなくなった」り、「やる意味が薄れて」きたりと、形骸化してしまうこともアルアルだと思いませんか?
取り組みは、やり始めよりも数ヶ月や1年後にどうなっているかで真価がわかるもの。
そこでこの取り組みを始めてから約5ヶ月のいま、社内メンバーがどう受け止めているかを調査しました。
チームでふりかえりをやってみようと検討されている方へ、個々人の運用方法やコツ、効果を感じているポイントなど参考になれば幸いです。
毎日のストックづくりのコツ
終礼時に5分間のふりかえり&ストックタイムを設けていますが、実際どのシーンで気づきを意識しているでしょうか。
ストックのノウハウも個々に貯まってきているはず!ということでコツも聞いてみました。
【質問】終礼時に共有するストックは、どのタイミングで入力やメモをしますか?
- 終礼時に書く・・・5/9名
- 終礼時と、仕事中に書き留めたメモから・・・4/9名
【質問】短い時間でふりかえりしてストックにまとめるためのコツはありますか?
(仕事中に都度メモ派のコツ)
- 気づいたこと・分かったこと・考えたことなど都度メモをとっている。 終礼でのストックのシェアはその中から選ぶと簡単です。
- たまに仕事中のメモがないときは、1日の中で一番印象的だったことについて深掘りしてみる。
(終礼時に考える派のコツ)
- とにかく思いつくままにいくつも書き連ねて、編集していく。
- ミーティングでの学びや他の人から教わったこと、調べたことから思い出すと良い気づきになることが多い。
- 具体的な事柄を思い出す→抽象化する のプロセスを意識しています。最初から抽象的にしすぎると、後から深掘りがしにくいと感じました。
終礼でのストックと気づきのシェアによる変化
「ふりかえり」の行動に、はっきりさせる・易しくするという習慣化のポイントを取り入れた効果は感じられているのか?気になるところです。
【質問】終礼でストックを入力やシェアするようになって良い変化がありましたか?あればどんな変化か教えてください。
- 「あった」(肯定的な意見)・・・9/9名
【質問】どんな変化ですか?
思考習慣の変化・・・5/9名
- 物事の意味や、自分自身の考え方・感じ方の変化など、小さなことにも気づけたり考えたりするようになった。
- まだ言葉になっていない考えを言葉にしようとすることや、アウトプットすることで、気づきが記憶に残り、 抽象化して他の問題にも使い回せるようになっていると思います。
- 再発見で過去のストックを繰り返し見返すことで、獲得した概念が定着している実感がある。
ふりかえりの機会の出現・・・2/9名
- 1日のふりかえりをして気づきをストックする機会が確実にできました。
他の人の気づきから得るものが増えた・・・4/9名
- 他の人がどんなことを考えているのかを知る機会ができた。同じ事柄でもアウトプットが違うのが興味深い。
- 他のメンバーのシェアから学ぶこともあり、そのまま自分自身の気づきだったりもする。自分だけの学びに他の人の学びが入ると何倍にもなる。
ずばり、習慣化しているか
肝心かなめの「習慣化」について聞きました!
【質問】終礼時のストックのシェアが、「ふりかえりの習慣化」に役立っていると感じますか?
- 習慣化している・・・6/9名
- まだ習慣化には遠い・・・3/9名
(習慣化している派)
- 実際1日1ストックしているのと、普段から学びを探すクセがついてきているので。
- 毎日みんなに話すことで、他の人の視点から気づきを捉え直す機会にもなっていて、これ自体がふりかえりの習慣だと思う。
(習慣化には遠い派)
- おそらく終礼でのシェアがなくなればやらなくなる。ふりかえりの具体的な利益を感じきれていないからかも。
- 一人だと難しい。
気づきや学びの共有から得ること
【質問】他の人のストックから自分にとっての学びを得ることはありますか?
- 「ある」・・・9/9名
(共有による学びのエピソード)
- 他の人が課題に思っていることにものすごく共感できたり、自分自身の課題の言語化になったりする。それが自分の課題の客観視にもなる。
- 他の人のうまくいかなかった体験や、(開発で)ハマったポイントなどから、自分がこれから気をつけるべきポイントが分かった。
- 自分にはない視点や意見があることが面白い。
- 職種や対象が違う相手に、「どんな言葉だと伝わりやすいのか」に気付ける。語彙力が増える。
「ふりかえりの習慣化」における課題
今後も当初の目的から外れず、意義も損なわずに続けていくためには課題の確認は必要です。実際聞いてみると、個々に課題を持っている様子。
社内的にもこのタイミングでヒアリングしたのは良かったです。
【質問】難しいと思うことや課題を教えてください。
時間をかけてしっかり考えきれていない。・・・3/9名
- あとで改めて考える時間を作りたいと思いつつできていない。
- 同じ気づきや反省を繰り返していたり、同じような結論に至ってしまい思考の幅を広げられていないと感じる。
ふりかえりを今後にどう活かすか、が今ひとつ。・・・3/9名
- 気づきを具体的なアクションプランにまで落としていないためか、次の行動に繋がりにくい。
- 「こういう課題が起こったときには、あの日の気づきが役に立ちそう」という風には整理されていない。Stockrに内容の重なりを抽出する機能がほしい。
再発見が活用しきれていない・・・2/9名
終礼で書いたストックは、再発見でスキップしがち(抽象的にしすぎてしまうからかもしれない)。
うまくふりかえりができているか不安・・・1/9名
実りのある振り返りが少しずつできてるなーというのが、見て分かると嬉しい。 以前に、自分のふりかえりに自信がなくなってアウトプットできなくなったことがありました。
以上、社内メンバーへのアンケート結果でした。
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おわりに
今回のアンケートや、実際の運用から、以下のようなことが分かりました。
▶︎自ら学びをつくる思考の変化を多数が実感できていること。
▶︎「他の人のストックをもっと見たい」ニーズは多く、ストックのシェアは肯定的に捉えられていること。
▶︎一方、自分自身のふりかえりの精度や効果には不安があること。
▶︎不安なくアウトプットし続けるには、メンバー間の信頼関係と承認しあう意識が必要なこと。
さらに砕いてみると、普段の生活の中に気づきのストックは比較的浸透させやすく、かつ取り入れることで良い実感を得ることもできるけれども、「再発見(≒抽象と具体の行き来)」はそれより難易度が高く、サポートが必要ということだと考えました。
また、メンバー間の気づきのシェアはとても有効だけれども、そもそも自分の考えをアウトプットすることは勇気が必要でもあります。
そのハードルを超えるには、シェアに対するポジティブな反応(口頭シェアであれば頷き、テキストであればリアクションなど)が意外にとても大事だということも分かりました。
ポジティブな反応での「承認」がメンバー間の信頼を強め、個々の自信につながり、一人のシェアから学びが広がる伸び代の大きなチームへの成長に繋がっていくように思います。
チームでのふりかえり習慣の運用から5ヶ月目、個々の課題はありつつも、とても有意義な体験であるという実感は変わらない結果となりました。
ぜひ皆さんのチームにも、ふりかえり習慣を取り入れてみませんか?
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