2年ぶりに睡眠薬を飲んだのでレポ
年明けに仕事を辞めた。過労によるストレスと睡眠不足による疲れが負のスパイラルを生み、抑うつ状態に陥る大きな原因となった。言ってしまえばよくあるパターンだろう。それでも、僕は直前の直前まで職場復帰するつもりでいたのです。なんとか現状を打破し、再び働こうとした。なるべくまともでいたいから。
そのため、一番手っ取り早く効果的だと考えたのは、睡眠薬の導入だった。過労で病む→眠れない→睡眠不足+過労でさらに病む→さらに眠れない。この地獄のループを断ち切るには、まず十分な睡眠をとる必要がある。「趣味や好きなことでストレスを発散して気持ちよく眠ろう♪」なんてことが出来れば大正解なのでしょうが、もちろん無理。となると、薬を使ってでも無理やり身体を眠らせるしかない。
が、結局は絵に描いた餅でした。正月だけに。
休職というインターバルが、僕に変な冷静さを取り戻させ、次々と悪い妄想をするようになった。「復帰したら溜まったタスク色々消化しなきゃな」「日々の業務以外にも、事務作業もいくつか残ってたな…新たな作業も追加されてるかも…めんどい」「ていうか周りの人たちに何て思われているんだろう…絶対ゴミだクソだって思われてる。どんな顔して出勤すればいいんだ」
睡眠とか薬とか関係なく、自分自身に潰された。具体的にいくつも負のイメージを膨らませる。仮に現実に起こるとして、それらが復帰日に一気に押し寄せてくるわけではないのに。悪いことばかりじゃなく、きっと良いことだってあるはずなのに。
まあ、過ぎた事を引きずっても仕方がない。そんなわけで、復帰のために準備した睡眠薬は、出番なく机の引き出しに仕舞い込まれた。今は好きな時間に寝て好きな時間に起きればいいのだから、薬は必要ない。
僕は夜型なので基本的に昼夜逆転の生活をしている。だいたい朝の7時か8時くらいに寝て夕方に起きるのですが、だんだん就寝時間が後ろ倒しされ、9時、10時、ついには昼過ぎに寝るようになった。気づくと逆転した生活リズムが再逆転。昨日の僕の就寝時間は22時過ぎだった。
いくら日中に起きていても、やっぱり僕は夜によく眠れないのです。まず寝付けない。情けない話ですが、30年生きてきても原因がサッパリわからん。どうにも夜にしっかりと眠れない。翌朝に何か用事があるわけではないですから、そのまま眠気が来るまで起きていてもよかったのですが「薬、ちょっくら試してみるか」という好奇心が勝ってしまった。
精神科に通っていた2年前に処方してもらったのを最後に、僕は睡眠薬を飲んでいない。身体に合わなかったから。しかし、復職に向けてそうも言っていられない状況だったので、ネットで睡眠薬を購入した。今って、医師とビデオ通話をするだけで処方してもらえるんですね。手軽で良い。
今回購入したのはエスゾピクロン。寝つきの悪さを改善するもので、効果も激強というわけではない。翌日の副作用が心配だったので、なるべく軽めのものにしたかった。とはいえ習慣性医薬品なので、ドリエルなどの市販品に比べると身体の負担は大きいはず。
1錠を口へ放り水で流し込む。その効果が現れるまでには5分とかからなかった。あくまで僕の感覚の話をします。
ベッドに寝転ぶ僕の上に、誰かが重くのしかかる。まずは両手、次に両足。上からぎゅうっと押さえつけられているような感覚で、気分は岩の下の孫悟空。身動きがとれない。どこか分からないけれど、五臓六腑では何かが激しく撹拌していて、血管が脈を打つ音もよく聞こえる。意識は少しずつぼんやりしていき、夢とうつつとを行き来する。僕の頭は覚醒しようとするのですが、薬がそれを無理くり阻止する。
気づくと僕は眠っていた。しかし、1時間もしないうちに目が覚めてしまった。持続性の低い薬なので、その後はなかなか寝付けず悶々としていた。
2年前に分かっていたことだった。無理やり眠らされている感覚がやっぱり不愉快だし、むかむかする。「上から押さえつけられている」と表現した通り、どこかDVを受けているような恐怖さえある。心地のいい眠りとは程遠いし、もう飲みたくない。結果論になるけれど、これでは復職の打開策にはならなかっただろうなあ。
少し浮かれ気分で取り出した睡眠薬。残りの9錠を、僕は再び机の引き出しに仕舞った。