俺の名前は吉沢亮だ。吉沢亮であり「吉沢亮」ではない。いわゆる同姓同名というヤツなのだが俺は自分の名前が好きではない。自分の価値というものを「吉沢亮」と比較して測られているような気がして仕方がない。捻くれた考えだと思うだろうか、確かにそう感じてしまうのもわかる。だが、そう思っている人たちはぜひ吉沢亮と同姓同名になってみて欲しい。誰かに自己紹介するときに「はじめまして、吉沢亮です。」なんて自己紹介する身にもなってほしい、微塵も面白くないクソみたいなギャグを初対面で挟んでくる微塵も
まさか、そっちが本体だったなんて。自らがドッペルゲンガーそのものであったと認識した刹那、どうしようもない高揚感に包まれる。もしこの身がまもなく消えゆく存在でなかったのだとしたら、私は何をしでかすか分からなかった。消えゆく意識の中で様々な記憶が脳裏にフラッシュバックする。これが走馬灯というものなのだろうか。いや、私などは結局、「人間」という高尚な存在ではなかったのだ。そんな私が走馬灯だなんて、甚だ馬鹿馬鹿しい。大学に入学して過ごしたこの2週間はもちろん。それ以前の18年間もきっ
空飛ぶねこ、それは私の・・・ 私の実家には一台の黒電話がある。とは言っても電話線が繋がっていないので電話機としての機能は果たしていないのだが。幼少期の私はその黒電話に愛着を抱いていた。本体には傷がいたるところに入っていてダイヤルのプラスチック部分は日焼けにより赤茶色へと変色していた。しかし私にはその黒電話のなんということもない経年劣化さえも愛おしく思えたのだ。妹と一緒にその黒電話を使っておままごとに興じていた一幕が当時の記憶としてありありと眼前に蘇る。 「もしもし!猫屋