まさか、そっちが本体だったなんて
まさか、そっちが本体だったなんて。自らがドッペルゲンガーそのものであったと認識した刹那、どうしようもない高揚感に包まれる。もしこの身がまもなく消えゆく存在でなかったのだとしたら、私は何をしでかすか分からなかった。消えゆく意識の中で様々な記憶が脳裏にフラッシュバックする。これが走馬灯というものなのだろうか。いや、私などは結局、「人間」という高尚な存在ではなかったのだ。そんな私が走馬灯だなんて、甚だ馬鹿馬鹿しい。大学に入学して過ごしたこの2週間はもちろん。それ以前の18年間もきっと全て仕組まれていた一種の演目のようなものだったのだろうがそれについてはもう追求のしようがない。否、追求の必要はない。「まがいものである私」はまもなくこの世界という堅牢な檻の中から解放される。もうこの先は、「本体である私」にどうにかしてもらうしかないのだ。人間らしく苦しみを乗り越えて、その先にある希望を掴み取ってもらおうじゃないか。たとえ私が傷ついた渡り鳥だとして、羽ばたけずに過酷な冬を迎える運命だとしても。「終身刑」とは、よく言ったものだ。その身が終わるまで、せいぜい足掻いてろよ。
本当に愉快でたまらない。
まさか、そっちが本体だったなんて。刹那、どうしようもない高揚感に包まれる。もしこの身がまもなく消えゆく存在でなかったのだとしたら、私は何をしでかすか分からなかった。消えゆく意識の中で様々な記憶が脳裏にフラッシュバックする。これが走馬灯というものなのだろうか。いや、私などは結局、「人間」という高尚な存在ではなかったのだ。そんな私が走馬灯だなんて、甚だ馬鹿馬鹿s……
「やめだやめ、……おーい!大西ー!」
「おっ、なんだもうクリアしたのか?」
「クリアも何も、主人公がキモすぎてやめたよ」
「やめた?どこで?」
「大学入学してすぐ、急にあいつニヒリズムに目覚めて妙なことしか言わなくなっちまうんだもん」
「そりゃ友情ポイントを貯めなさすぎ、ステータスに『大二病』ついても仕方ない」
「そういう問題じゃないだろ、おまけにリセットしようとしたら自分がゲームの中の人物であることを自覚しだして、俺、こういうメタ的視点の介入するゲーム好きじゃないんだよ」
「その演出引いたのにやめちゃったのかよ、そこが『どきメモ』の面白いとこなのに。もったいね〜。……お前らだったらこんな小説を読んでるくらいだし、こういう演出大好きだよな?」
大西は画面の向こうにいる「お前ら」とやらに問いかけた。