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天のひかりの宿るとき
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大地に刻まれた記憶が何かを語るかのように迫ってくる...
凝縮された歴史の記憶なのか… 怒涛の波に削られるごとに現れてくるその姿が、まるで受胎告知を思わせるように感じさせるのは何故だろうか...
何度も訪れているこの見知った岩は、来るたびに違った問いを投げかける不思議な岩である。変幻する心の諸相を映すかのように立ち現れて来るその姿は、膨大な人類の記憶の迸りを見せられているようにも思えてくる...
圧縮された記憶が展開するその皺の一本一本に宿る力強さは、まるで意志を持つかのように何かを語って止まない...天から授けられたひかりを記憶するかのように輝くその胸は、その眩しさのなかに命の神秘を宿しているようにも思えてくる...
岩のなかから競りだしてくるその姿は、微かながらも確かな感触をもって私に迫ってくる...それはいのちの宿る瞬間を知らせるかのように私のこころを叩いている...皺の中に折り畳まれた次元が開いてゆく度にいのちの秘密が明かされてゆくのを私は見せられているのかもしれない...
この胸を打つ微かないのちの連打は、密度を増して私の体を貫いてゆく...諍いようのない天の意思でもあるかのように何をか語るその姿を前に、私は言葉を失くした子供のように立ち尽くしていた...
鋭い意識の稲妻に打たれたような微細な振動が身体のなかを駆け巡ってゆくのを遠くで感じながら、厳然と立ち現れて来る問いは、共振した無意識の扉を開き、霊妙な雫となってその深みに落ちていった...
言葉なくただ黙ってそのうしろ姿を見送りながら、その雫が発した残り香のようなある種の余韻だけがかろうじて私のこころを満たしていた...儚くも消え入りそうに漂うそれは、しかし同時に力強い通奏低音のような響きを伴なって浸透してゆき、いのちの奥行きを描き出す舞台装置となって私の意識を象っていった...
意識では視えない問いの彼方に、有るか無きかの幽かな脈動が走ったような予感だけが、唯一の色彩として私の意識を染めている...それはやがていのちの通奏低音に抱かれて確かな鼓動を刻みながら、言外の問いとなってふたたび姿を現わしてくるのかもしれない...
そのとき私に言葉はあるのだろうか...
生も… 死をも超えて鳴り響く鐘のように迫りくるそれは、はてしなく生まれ変わりを繰り返してきた記憶を目覚めさせたのかもしれない...
帰還の時を告げるために...
Art MAISON INTERNATIONAL Vol . 26 掲載作品