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【子ども】文字⑤手仕事とお話をつなぐ

毎回、会の最後には手仕事の時間を取っていて、ちょっとおしゃべりしながら指編みをしたり棒編みをしたりと、ほっこり過ごす。リズムの時間やお話の時間とは独立した、特別な時間だ。
半年間子どもたちと過ごす中で、この手仕事の時間をメインのお話とつなぐのもおもしろいんじゃないかな・・・とぼんやり考えていた。


いいお話、みーつけた!

そんなある日の放課後、小学校で読み聞かせ用の本を読んでいたら(この頃はまだ、平日は小学校の先生をしていた)、羊の毛刈りのシーンが出てきた。

「羊毛を触ったら想像を駆り立てるかな?」と思いつき、小学校での読み聞かせのときに配ってみると、思った以上の反応。図工の時間にお話を絵に描き表してもらったら、いつもより楽しそう。これで羊毛クラフトなんかできたら、さらにおもしろそうなんだけど・・・残念ながら、決まったカリキュラムをこなすだけでも手一杯だ。総合的な学習の時間の内容は、学年単位で決まっているし・・・

いやいや、もっと相応しい場所があるではないか。
次の神戸シュタイナーハウスでは、手仕事とお話をつないでみよう。

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(↑ 上;いろんな形の試作 下;昔、教わりながら作ったペーパーウェイト )

早速材料を調達し(運動会に遠足、学習発表会、マラソン大会・・・買い物に行く時間を捻出できないときは、ネットにお世話になること多々!)、自主勉強会で教わったときの記憶を手繰り寄せ、いろいろな形の羊毛クラフトを試作。絵を考えたり、絵本を覚えて練習したり(結局、覚えきれず抜粋・・・)、ワクワクする準備期間を過ごした。


羊毛でボールを作る

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(↑ 羊毛を巻いてボールを作る)

羊毛で何か作るとき、ニードルで突くやり方が一番メジャーな方法だろうか。最近は100均でもキットが手に入るようになった。
しかし、全てが善である夢のような世界とこの現実世界を行き来しているような発達段階の2年生に(発達段階の話はこちら→年齢に沿った成長のために)、まさか針で羊毛を突けとは言えない。痛みを連想させる活動は、落ち着いて現実を見つめられる年齢になってからの方が良いと私は思う。

そんなわけで、今回は石鹸水を使って羊毛を縮絨(フェルト化)することにした。家にあったハンドソープを引っつかんで子どもクラスへ。

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(↑ なぜか部屋にあった洗面器。なかったら詰んでた・・・)

経験のある方なら予想できると思うが、羊毛ボール作りにおいては、ちょっとした工夫や配慮のあるなしが出来上がりを左右する。このときの私はそんなことは知らず、また準備にかける時間も十分になく、ただワクワク感だけで子どもの前に立った。もちろん、子どもたちも私と一緒にワクワクしてくれて、楽しく活動できたのは言うまでもない。ただ、出来映えは少々残念だったかもしれない。

【この後も何度か失敗経験を重ねて、わかった留意点】

留意点①; ハンドソープが、お肌に優しい弱酸性だった。羊毛の縮絨に適しているのは、アルカリ性。髪の毛を洗うとバッシバシになってしまうような固形石鹸が◎
留意点②; たまたま給湯器のある部屋だったので良かったが、なかったら水でするつもりだった。今考えるとおそろしい・・・。水もやってみたことがあるけれど、お湯の方が縮絨が早くて◎ セーターをお湯で洗うと縮んでしまうのと同じ原理を利用しているためだ。水筒にお湯を入れて持っていくのも良いかも。
留意点③; 洗面器にハンドソープを入れてからお湯を入れてしまい、もこもこの泡だらけになった。泡があっても良いが、多すぎると別の遊びに発展して本来の目的を果たしにくくなる。
留意点④; 指でつまんでも剥がれない程度まで表面が硬くなれば大丈夫。あとはお好みの硬さ・大きさになるまで縮絨すればOK 縮絨した後はよくすすぐこと。そして、よく乾かすこと(陰干し)。ここを疎かにすると、後で生乾きの雑巾みたいなにおいがする。
留意点⑤; タオルはたくさん必要。畳の部屋で活動するならビニールシートがいるかも。小さい子なら濡れても大丈夫な服装で。
留意点⑥; そもそも、柔らかい状態のときに、きれいな球体に丸めておく方が簡単に整形できる。今回はいきなり石鹸水につけたので、球になる前に縮絨し始めてしまい、オタマジャクシみたいなものの集まりになった子もいた。
留意点⑦; 羊毛によって、縮絨しやすいものとそうでないものがある。つやつやし過ぎているものや、チリチリし過ぎているものはやりにくい。詳しい人なら種類がわかるのかもしれないが、私にはそこまではわからないので、感触で見分けている。


羊毛で毛糸を作り、クレヨンで染める

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(↑ 家でも続けるくらい、心に響いた”クレヨン染め”)

もう一つの活動として設定したのが、毛糸づくり。
お話の中に、毛刈りを嫌がったメメールという羊の毛で、おばあさんが毛糸を作り、マフラーを編んでくれるシーンがある。子どもクラスでも「メメールの大好きなおじょうさんのために作ろう」とお話を振り返りながら作った。
羊毛をつまんで引き出し、両手で拠ると毛糸ができる。絵本の中ではほんの一言でしか書かれていないけれど、毛糸を作るって結構大変だ。一言では済まない。太さがまちまちで長くなりにくかったとしても、自分の手でふわふわの羊毛を細長い毛糸に変容させることができる、それが大切な人を喜ばせることにつながるという経験をしてほしいのだ。

そして、毛糸が出来上がったらクレヨン染め。
要らない紙(このときは画用紙にしたが、表面がつるつるした紙がベスト)にクレヨンで色を塗り、毛糸をそこへ擦りつけると、毛糸に色が移るのだ。子どもたちが使っているのは蜜蝋クレヨン。これがまた発色が美しく混色も容易なので、子どもたちからも歓声が上がった。

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(↑ この歓声を待ってた、私)


もちろん、漢字にも触れる

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このお話で学んだ文字は、羊・美・糸の3文字。
美という文字の上半分は、羊。お話を聞いたり毛を触ったりしてきた羊。大きくて立派だと美しいと絶賛される羊。

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子どもたちに絵を描いてもらったら漢字を間違っている子がいて、羊の横画が1本多かった。日曜クラスの子は学校で漢字テストを受けるから間違いが発覚するだろうけれど、全日制のシュタイナー学校だったら大変なことだ。子どもの作品の出来上がりにも責任を持たなくっちゃ、と思った出来事だった。

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えりか先生。神戸シュタイナーハウスでは、子どもクラスを担当。
小学校教員を経て、現在は放課後等デイサービスの指導員として働くかたわら、神戸・京都において日曜クラスの先生としても活躍中。
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神戸シュタイナーハウス
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