【子ども】昔話③定番の昔話はこんな感じで~七夕~
季節はめぐり、7月。七夕の ♪笹の葉さらさら~ の歌は、レミソラシの五音でできていて低学年にはぴったりだ。
リズムの時間への切替で移動するときにはいつも、季節にちなんだ歌を歌うことにしている。なぜかって、月1回なので季節のめぐりは早いけれど1年のリズムも大切にしたいから。数年続けていると、「前もこの歌じゃなかった?」と尋ねてくる子がいて、私は「そうそう!この季節になると歌いたくなるねん~」とか言いながら、心の中では小躍りしている。同じ季節をいつも同じ人と過ごせるって、なんだか幸せだ。
七夕のあの歌を歌うんなら、お話も七夕がメルヘンぽくて良いかも。もしかしたら、定番の昔話ほど、意外と知らないかも。
そんなわけで、七夕のお話にも挑戦した。
お話を再編する
私は子どもの目が変わる瞬間が好きなので、絵本や紙芝居ではなく素話(=ストーリーテリング)をする。具体物を用意することもあるし、お話の途中に絵を見せることもたまにはあるけれど、基本的には何もなし。ただ、前に立って語るだけ。そうすると、子どもの目が丸くなったり、細くなったりするのがよく見える。そして、よく動くの目の奥に私の頭の中にあるものと同じ映像が見えるような気がしてくる。関西ならではかもしれないけど、「なんでやねん」「おかしいやろ」とかツッコミも入って、臨場感たっぷり。もちろん、そんな感覚を味わえるのは20分くらいのお話の中のほんの一瞬で、大半はお話を思い出すのに必死だ。でも、そうだとしても、映像を共有できるのは楽しい。同じ時間、空間を生きている実感が沸く。
定番の昔話は、資料を手に入れるのが簡単だ。ただ、素話でも伝わりやすいように言い回しを変えることが多い。色や情景が浮かぶような言葉を入れたり、登場人物の表情やしぐさを言い表したり。例えば、「悲しみました」よりも、「うつむいた頬に、一筋の涙がこぼれました」の方が、想像しやすい。
特に、絵本の場合は絵も大切な表現なので、文章だけではちょっと足りない。だから、書きかえは必須だ。例えば、「こんなに大きな川がありました」ではどのくらいかわからないので、「向こう岸が見えないくらい大きな川がありました」のような具合に。
なんて今は言えるけれど、当時はそんな余裕はなく、話しやすくて覚えやすくてように書き換えていたというのが本音だ。書き換えると、丸暗記よりも自分のものになったような手ごたえがあって、それも良かったんだと思う。
七夕のお話
昔むかし、神様が星空をおさめていたころのお話です。
天の川の西の岸に、織姫という神様の娘が住んでいました。織姫は、機織りがたいへん上手で、織姫の織った布は色も模様も夢のように美しく、丈夫で雲のように着心地の軽い、素晴らしいものでした。
一方、天の川の東の岸には、牛飼いの彦星が住んでいました。彦星は、毎日、天の川で牛をきれいに洗ってやり、青々とした新鮮な草を食べさせて、よく牛の面倒を見る、優しくて働き者の若者でした。
神様は、働いてばかりいる娘のことを心配し、結婚相手を探すことにしました。そして、天の川の向こう岸に住むという、働き者の彦星のことを聞きつけて、2人を引き合わせることにしました。
「お前たち2人は、たいへん真面目でよく働く。どうだ、彦星よ。織姫と結婚しないか」
彦星は頭を深く下げておじぎをし、
「私のような者に、ありがたいお話。よろこんで、結婚をお受けします」
こうして2人は、めでたく夫婦となりました。
ところが、結婚してからというもの、2人は毎日、天の川のほとりで仲良くおしゃべりばかりしています。
そのうちに、織姫の機織り機にはほこりがつもり、世界には新しい布がいつまでたっても届かないようになりました。
また、彦星の牛たちはみるみるやせ細り、病気になってしまいました。
そんな2人の様子を見ていた神様はたいそうお怒りになり、2人を天の川の東と西へ引き離してしまいました。
天の川は深くて流れが速く、渡ることはできません。あんなに仲良く楽しくおしゃべりして過ごしていたのに、もう絶対に会うことはできません。
織姫は、毎日泣きながら布を織りました。おかげで世界の布は、涙色ばかり。ちっとも美しくありません。
彦星も毎日がっくり肩を落とし、牛たちは心配そうにモーモー鳴きました。
神様はそんな2人のことをかわいそうに思い、1年に1度だけ2人が会うことを許してやることにしました。
こうして、年に1度、7月7日の七夕になると、神様の遣いであるかささぎが天の川に橋をかけ、2人は会うことができるようになったのです。
闇が深まると光が際立つ
(↑ こんな形の天の川を想像して聞いていたのかな)
七夕のお話を共有したところで、スケッチブックに絵をかいた。すると、天の川の形が、それぞれ違う。真っすぐ、勢いよく流れている子もいれば、ちょっと曲がっている子もいる。
子どもたちは、お互いの絵を見てとても不思議そう。だって、自分の思い描いた川が”普通”だと思っていたのに、いろんな形があったから。もしも絵本を読んでいたら、みんな同じようにさっき見た天の川を描こうとして、正解と不正解が出てきてしまったかもしれない。でも、自分の想像の川なんだから、どんな形だって正解だ。
天の川の周辺は、夜空だ。この夜空を暗くすることで、天の川がはっきり光って見えるはず。ということで、いつも以上に
「まだまだ暗くしてみて!」
と励まして、青や紫やいろんな色のクレヨンを何重にも重ねて描いてもらった。
子どもたちは自分の天の川を輝かせようと、根気よく夜空を塗りこむ。少しずつ、少しずつだけれど、確実に光が強くなっていく。
私は、子どもたちの絵が変化していくのを眺めながら、闇が強まると光が際立つということを実感していた。公立学校の教育方針への疑問が強まると、シュタイナー教育への憧れが強くなるなあ・・・なんて。
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えりか先生。神戸シュタイナーハウスでは、子どもクラスを担当。
小学校教員を経て、現在は放課後等デイサービスの指導員として働くかたわら、神戸・京都において日曜クラスの先生としても活躍中。
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