森の中のオフィスに通う
海抜670mほど。スカイツリーより高い場所にある長野県北部の森の中。そこに私たち株式会社サンクゼール(以下 サンクゼール)のメインオフィスはあります。
出勤時、森に入る前の道から見えるのは、田んぼと畑、ときどき建物。最寄りのコンビニは?と聞かれたら「車で……」から説明が始まります。
社員用駐車場ではクマ対策が必要。冬に猛吹雪でオフィスが停電!てこともありました。
町中に比べたらかなり不便。たまに危険。でも、「オフィスを町に移そう」という声は社内から上がりません。
私たちは「久世福商店」などのブランドを持ち、製造から販売までを行う食品会社。オフィスが町中にあっても事業は成り立つでしょう。
では、なぜ?
1990年台前半、多額の投資から会社は経営難に陥っていました。
創業者であり、当時の社長であった久世良三さん(弊社では全員がお互いを「さん」付けで呼びます)は、大きなストレスから心身の不調に悩まされます。
忙しい時、苦しい時、良三さんは自社のワイン用ブドウ畑や隣接する森を歩きました。
爽やかな光と風。鳥のさえずり。
自然の中で良三さんは大きな癒しを得ることができました。
その後、様々な出会いや努力の末、体調も会社の業績も徐々に回復。
2013年に事業拡大のため新たなオフィスとなる建物を探し、この森に出会います。良三さんは、売りに出されていた「建物付きの森」を見て、「ここだ!」と思ったそうです。
良三さんはこの森で、自然が持つ心身を癒す力を社員や多くの方にも感じてもらいたいと考えました。
土地を取得したあと、荒れた森を人が入れるように整備することに。でも、森に負荷をかけ過ぎて壊してしまっては元も子もありません。
そこで専門家の先生方のお力も借り、調査と整備をじっくり10年以上かけて行ってきました。
近年、テレワーク化が進み、多くの社員が家から仕事をできるようになりました。それでも日々オフィスに通う社員は多くいます。
出社の必要性や、効率を考えてという人もいますが、やはり多くの社員がこの森の中の心地よさを求めて通っているように思います。
四季折々表情を大きく変える風景。森や敷地内のブドウ畑に踏み入れば包まれる土の匂い。ふかふかと柔らかな踏み心地。優しい木々の囁き。
ひとりひとりが感じた小さな癒しから森への愛情が芽吹き、大きく育ってこの森を守り未来へつないでいく。
そして、また誰かを癒すでしょう。きっと。