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身近な「あの商品」の実例をもとに新規事業企画の大切な考え方を"10"ステップで解説してみた

新規事業を企画する際に「どうすれば良い企画を作れるか」と悩まれている方、仮に企画職ではなくとも「企画よりの思考を身に付けたい」と思われている方、多いのではないでしょうか。

ただ、企画力というのは机上では身に付きづらいものです。
今まで私は約30の新規事業を企画してきましたが、実際にやらないと身に付かないと実感しています。

そこで、実際に私が過去に取り組んだプロジェクトを事例として取り上げ、新規事業企画のプロセスを解説します

半分はビジネスに役立てる、半分はエンタメを楽しむくらいの軽い気持ちでご覧いただければと思います!
今回取り上げるのは、「日本一高級なレトルトカレープロジェクト」

新規事業企画のプロセスを【"10"ステップ】でご紹介します。
また、各ステップは【実例】と【解説】で構成されています。

実例でプロジェクトの具体的なプロセスの理解をして、
解説でそれを学びに変えるような読み方をしていただければと思います。

以下の記事をご覧いただきながら読むことで、プロジェクトを追体験するような形で、サービス企画のリアルを感じていただけます!

■サービスの方向性を決める

サービスの方向性を考えます。詳細まで詰める必要はなく、あくまで方向性が決まればこのステップとしては良いでしょう。

1.自分が不便さを感じたことを考える

【実例】
会社売却により得られた収入をふるさと納税した。その際に返礼品として黒霧島を選んだが保管場所の確保に苦労した経験があった。
また、その返礼品を誰かにプレゼントしても重くて持ち運びづらいため喜ばれることはなかった。

大量の黒霧島

【解説】
自分が不便を感じたことから考え始めることには2つの理由があります。
1つ目は、自分が不便さを感じているので、それを解決することに対する強いモチベーションがあるためです。
2つ目は、ユーザーの気持ちに寄り添えるためです。
よく「ユーザーの気持ちになってサービスを考えよ」なんて言いますが、自分が経験をしたことが無ければ本当の意味でユーザーの気持ちになることはとても難しいはず。

でも、自分が不便さを実際に感じたということであれば、本当の意味でユーザーの気持ちになれますよね。

2.その不便を解決しようとしてるサービスがあるか考える

【実例】
私が感じた不便さを解消するには、「常温保存が可能」「保管に場所を取らない」「プレゼント用として貰った人が喜んでくれる」の要素が必要であると考えたが、ふるさと納税の返礼品でそのような商品は無かった。

それに加えて、ふるさと納税として出品されている商品は価格競争になっており、生産者が泣いている状態であることが発覚。

【解説】
あなたが不便を感じたことであれば、既にそれを解決するサービスが存在している可能性があります。
ただ、二番煎じだからダメということはありません。市場が明らかに競合で飽和している状態でなければ、チャレンジしても良いでしょう。

3.サービス概要を考える(また、自分の強みを活かしたサービスであるか)

【実例】
ふるさと納税サイト内の既存の価格競争に巻き込まれないために、逆張りをして「思いっきり高級」なものを作ることに決定。

次に「どのような高級品」を作るか考えたところ、私が宮崎で焼肉店を経営しているため良質な肉を仕入れるルートは既にあること、マレーシアでカレーのチェーン店を経営しておりカレー作りのノウハウがあることが理由で、日本一高級な宮崎牛レトルトカレーを作ることに決まる。

【解説】
解決したい不便が決まったら、それを解決するためのサービスを考えます。このステップではあくまで概要が決まれば良いでしょう。大切なことは「自分の強み」をサービス作りに活かすこと。
強みを上手に活用することで競合と差別化されたサービスに繋がります。

恵島が経営している焼肉屋
恵島が経営しているカレー屋

4.その課題の解決を通して何を実現したいかを考える

【実例】
地元宮崎への貢献意欲が強かったため、宮崎産の食材を使うことで現地に活力を与えたいと考えた。
また、私が人を喜ばせることが好きな性格でもあるためプレゼントとして喜ばれる食品を作りたいと考えた。

【解説】
これを定めることで、サービスが岐路に立たされた時の羅針盤になります。
例えば、機能Aを実装するか、機能Bを実装するか。それを決める際の意思決定の基準として役立ちます。

宮崎の名所「関之尾滝」

■サービス/商品の詳細を考える

これまでは「商品の方向性」を考えましたが、これからは「サービスの詳細」を考えていきます。

5.競合サービスを調べる

【実例】
高級レトルトカレーで調べたところ、一番高いものが神戸牛のレトルトカレー5000円。これより高級なカレーを宮崎牛を使って作ろうと決まる。

【解説】
競合サービスを調べてどのような点で差別化をするか考えます。

6.サービスの具体的なアイデアを発散させる

【実例】
「日本一高い高級カレー」「プレゼント用として使える」というサービスの方向性から外れないようにアイデアを発散させる。

【解説】
「具体的にどのようなサービスにするか」アイデアを出し合います。
1~4で考えたサービスの方向性に合致していることを意識しながらアイデアを発散させます。
誰かが言ったことを否定しないこと。「それいいね」と肯定的な言葉を掛け合うと良いでしょう。

オンライン会議の様子

7.サービスの具体的なアイデアを絞り込む

【実例】
最終的に以下のアイデアを採用した。
・金箔を振りかける
・入れ物は木箱にする
・ネーミングは「華礼」と書いて「カレー」と読ませる
・パッケージの商品名の字体を数十ある候補から絞る

【解説】
一度発散させたアイデアを絞り込んでサービスの詳細を詰めます。
「自分たちが作りたいサービスの方向性に近づくかどうか」「競合サービスとの差別化になるかどうか」等の軸で採用するアイデアを取捨選択します。

金箔の試作品
木箱のデザイン作成の様子
パッケージの字体候補

■サービス/商品の詳細を考える(専門知識を活用する)

サービスによっては、その「業界/職種特有の知識」が必要になるケースがあります。例えば、建設業界特化のサービスや法務周り特化のサービスなど。
そのため、そのようなサービスを企画している場合は、専門家の知識を活用しましょう。

8.専門家の知識をサービス企画に活かす

【実例】
マレーシアのカレー屋の責任者から「日本人の口に合うカレーは作れない」と言われ、急遽他にカレーに詳しい人を探すことに。

知人から「カレーおじさん\(^o^)/」という年間で1000食カレーを食べるという業界では有名なカレーインフルエンサーを紹介してもらう。
最近はどのようなカレーが人気なのか等、カレーについての流行りを聞き、サービス企画に活かす。

カレーおじさん\(^o^)/のアドバイスをもとに最終的に以下のアイデアを採用した。
・宮崎牛を豪快に使ったステーキカレー
・カレールーはサラサラに、薬膳カレーにする
・マンゴーを使うことでマイルドな味に仕上げる

【解説】
専門家から業界特有のトレンドなど、サービスを企画する際に押さえておくべき点の情報収集をします。
ここで気を付けるべきことは、専門家はあくまでその領域の専門家であり、ビジネスの専門家ではないということです。ビジネスを考慮した上で、専門知識をどのようにサービスに活用するかは、自ら決めるべきことです。

左から、恵島・カレーおじさん\(^o^)/

■サービス/商品の企画を実行に移す前の事前確認

念入りに企画を練っても、滞りなく実行できることはほぼ無いでしょう。何かしら想定していない問題が起きるはずです。
想定していない問題が起きた際に対応するための事前準備をしましょう。

9.ステークホルダーとの認識合わせ

【実例】
レトルトカレー作りに関わるステークホルダーは「精肉業者」「食肉加工業者」「レトルト加工業者」「金箔業者」「木箱制作業者」「パッケージ制作デザイナー」など非常に多い。仕様に関して最終の認識合わせをする。

【解説】
ステークホルダーとの認識の齟齬により、「想定していない問題」が起こるケースがあります。
これは、ステークホルダーとのやりとりを記録に残していないが故に決定事項に抜け漏れが発生するケースや、そもそもお互いが同じ言葉を使っているが、言葉の定義が少しズレていたケースなど、「本当にそんな基本的なミスあるの?」ということが起こったりします。
初めてお仕事をご一緒にするバックグラウンドが異なる人だと起こる可能性があると個人的には思います。
業界特有の仕事の進め方、慣習などあったりしますからね。

10.余裕のあるスケジューリングをする

【実例】
「金箔をカレーにかけてみたら意外と目立たない」「入れ物の木箱を作ってみたら思ったより大きい」「カレーをレトルト加工したら味が変わってしまった」「業者のミスで納品物の仕様が違う」
などが起こる事態に。
「想定していない問題」の発生リスクを抑えるための事前準備や、発生してもリカバリーできるように余裕のあるスケジュールを立てるなど事前に準備できることはする。

【解説】
特にものづくり(デザインなども)にあることなのですが、出来上がったものに対して「なんか違う」となることがあります。
「もう少し色合いが薄い方が良い」「大きさが小さい方が良い」「質感に光沢があった方が良い」など、出来上がってからでないと分からないことがあります。

そのため、事前に余裕のスケジューリングをしておき、複数回はやり直しのサイクルを回せるようにしておくと良いですね。

以下の記事をご覧いただきながら読むことで、プロジェクトを追体験するような形で、サービス企画のリアルを感じていただけます!


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