アットホームな職場が苦手ですが。
この話は、私が某法律事務所で働いていた時の経験がもとになっている。
どこの法律事務所も所内の雰囲気がこんな感じなのかはわからないし、法律事務所によって社内の雰囲気はそれぞれだから一概に言えない。
ただ、私が働いていた事務所は、社員同士が友達のようで家族の話が飛び交うような、いわゆるアットホームな職場だった。
上司は自分勝手で意味不明な言動とって部下を困惑させるたびに嫌悪感を感じる一方、
同僚は基本的にやさしく、困っていることがあったら手を差し伸べてくれるようないい人が多かった印象である。
だが、社内の空気がアットホームすぎて嫌気が差すことが何度かあった。
特に仕事とプライベートとのメリハリがないところが好きではなかったと思う。
社員同士での仕事中の雑談は当たり前だったし、休憩スペースは執務スペースの隣にあって、休憩スペースにいる人が執務スペースの人に平気で話しかけてくることもあった。
中には、自分の子どもが遊んでいるビデオを音声ありで再生して見せてくる人もいた。
ただ、同僚の人たちのことを嫌いだったわけではない。
私は仕事中は集中して取り組みたいほうだったので、こういうメリハリない場には合わないなあと思うことが多々あった。
もしかしたら職場の人の中で共通の趣味があったり、心を許せるような1人でもいたら、もうちょっと印象は変わったかもしれない。
有給をつかおうとするにも、某先輩からいちいちどこで何をするか聞かれるが本当に息苦しい。
テキトーに答えたり、回答をぼかしておいたらいいのだが、毎回となると面倒くさく思う。
ほっといてほしい。
何度こう思っただろうか。
有給を使って休もうと思っても、別の社員から取得理由をあれこれ聞かれるとなると本当に使いにくい。
ある先輩社員は「子供の参観日があるから」だとか有給をとる理由を話してから有給申請しているが、そもそも理由を話してから有給を取らないといけないものなのか。
やっぱり社員数が少ない小さな会社はアットホームにありがちなんだろうか。
社員の家族構成や趣味まで全て把握されていないといけないのか。
家族のことは話したい人もいれば話したくない人だっている。
職場の人の子供や家族の話が勝手に聞こえてきたり聞かされることがあるけれど、
正直なところ、知らない子供や家族の話を聞かされても話に興味が持てなかった。
面白い体験談とか話の内容によっては興味深く聞けるものもあったが、それ以外の日常の話はいまいちピンとこない。
どうでもいいというのは語弊があるが、職場の人も昔からの友人や知人でもないし、その知らない子供の話ならなおさら誰かイメージができないし、その子の性格や見た目とかもよくわからないから何とも反応し難い。
身内の子供だとか友人の子供だとか知っている子供の話があれば興味を持って楽しく聞けるだろうが、
他人の子供の話はやはりどういうリアクションを取るのが正解かわからないし苦手である…。
まあ今思えば、こういう時は真剣にこたえる必要もなく、適当に相槌うったり会話していればよかったのだろう。
あまり考えすぎなくてもよかったと思う。
自分が園児や小学生だった頃を思い出しながら、想像力を膨らませて話を聞いていた時もあるが、子どもや旦那の話をされている時の同僚たちは一見すると愚痴を言っているようだけど、話している時はいきいきしているように見えた。
自分の身の上話をする番ではないと察して、とにかく聞くことに徹した気がする。
私だって価値観や共通の趣味を持つ仕事仲間と仲良くなれば、楽しく働けて充実した日々を過ごせるんだろうなあと思って、
同僚の皆さんを少しうらやましく見ていた。
だが、私にはこの場が少し合わなかっただけ。
全体的にアットホームなゆるい雰囲気が流れる職場だったように思う。
お客様宛てに送るメールに全然違う案件のファイルが添付されていたり、
内部でのメールのやり取りが外部に漏れていたり、個人情報やコンプライアンスの観点からも問題になることもあった。
無意識に失言を放つ上司は、お客様に対しても失礼な言動をしてしまったかもしれない。
職場に流れる空気には多少の緊張感が必要な気がした。
ゆるい空気が流れているとミスが増える。
自分が心を許した相手以外には、あまりプライベートなことを話さないようにしている。
プライベートの話をしたら、明日には全員に知られていることもある。
アットホームな雰囲気が流れている時は、
お手洗いなどでそっとその場を離れて逃げるか、
仕事に逃げるかして、いつもなるべく失礼ないように交わしていた覚えがある。